第8話:目が覚めたら彼女がいないんだが

 次の日、目が覚めるともう昼近かった。前回目が覚めたら1年後だったので、心配してスマホでチェックしたけど、藍子さんと手をつないで眠った翌日だ。


 目が覚めると彼女は部屋にいなかった。スマホを見ると、彼女からLINEのメッセが入っていた。



『バイトに行ってくるね。ぐっすり寝てたから起こさなかったよ』



 その後、ネコが投げキッスしているスタンプが押されていた。とても可愛らしい。一般人の俺がこんな可愛い彼女と付き合えるなんて、この1年で何かが劇的に変わっていると思う。


 俺は、それを見つけた方が良さそうだな。そういう意味では、橋本と会いたいな。未来(2022年)と現在(2021年)の唯一の共通点ではないだろうか。俺は早速メッセした。



「会えないか? タイムリープについて話したい」


『タイムリープ! ロマンあるな! どこで会う?』


「大学は現状が分からないからちょっと怖い。うちの近所のマックでどうかな?」


『いいよ!』



 なんか身体がすごく重たい。これはタイムリープによる影響なのか。具合の悪さもあるけど、これは「時間遡行酔い」なのだろうか。何かの本で読んでことがある。


 1年後へのタイムリープとかファンタジーを体験するには、ノーリスクという訳にはいかないのかもしれない。


 俺は、適当な服に着替えて、外に出た。


 眩しい……


 視力が落ちたような気がする。俺の視力は1.5くらいあったはずが、多分、今は1.2とか1.0とかじゃないだろうか。詳しくは分からないけど、物の輪郭のブレ方が以前より酷い。



 *



 時間は14:00過ぎ。昼の時間は過ぎているので、お店は比較的客が少なかった。それにしても、朝から何も食べていないはずなのに、全然食欲がない。


 コーラを注文したけど、食べ物はハンバーガーはおろか、ポテトすら注文しなかった。シェイクはちょっと飲みたい気はしたけど、とりあえずコーラでいいや。


 橋本はまだ来ない。俺はスマホを触りながら時間をつぶす。


 確かに、俺の知らない事柄が普通にニュースとして流れている。怖いと思う反面、こうなるとちょっと面白くなってきていた。



「(すごい。やっぱり俺は本当にタイムリープしている!)」



 この作業で確信もできた。橋本に話すネタは尽きなさそうだ。



『姉ちゃんも行きたいって!』



 遅れてるくせに、橋本から追加メッセがきた。たしか、橋本には、可愛いお姉さんがいた。あいつんちに遊びに行った時に何度か会って、何度か話したことがある。


 タイムリーパーを好奇心で見たくなってしまったのだろうか。……まったく、勝手に言うなよ。



「OK」



 あまり何も考えずOKした。俺はこの「可愛いお姉さん」よりも、タイムリープのことが話したくてしょうがなかったのだ。一人でも多く「帰るためのアイデア」を出してくれるなら、知恵を貸してほしいところなのだ。


 しばらくして、店内に現れてシェイクを買った後、俺のテーブルに来たのはその「可愛いお姉さん」の方だけだった。



「あれ?」

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