第25話 再会

「アビリティが増えたな」


忙しいからオンラインで週2で1時間程ならと、乾巧の弟子入りを許可して連絡先を交換して俺はダンジョンを出た。

で、別れ際に精神修養として瞑想するよう――急に数が増えたとはいえ、パニクってたので精神的に脆いと考え――指示を出したら【指導Lv1】のアビリティが手に入った。


どうやら指導は的を得ていたようだな……


全然関係ない適当な助言では流石にアビリティは湧いてこないと思うので、瞑想は当たりだった様だ。

因みに効果は、弟子が自分の指導通り訓練した場合、その効果が大幅に上がるという物となっている。


レベルがあるので、効果もきっとレベルと共に上がっていくんだろう。

ま、どうやったらレベルが上がるのかは皆目見当がつかないが。


取り合えず、指導していけば上がっていくんかね?

まあどうでもいいか。


「精々瞑想して強くなってくれ」


基本関わるつもりはないので、彼が勝手に強くなっていってくれる事を願うばかりだ。

境遇に同情はするけど、それとこれとは話が別だからな。


―—2日後。


翌日Eランク。

そして今日、Dランクダンジョンを攻略。

何故かボスの数がどっちも多かったが、まあクリアには問題なかった。


そういや爺ちゃん祖母ちゃんに聞くの忘れてたな……ま、いっか。


「ん?」


脱出ゲートを潜って外にでたとほぼ同時に、乾巧から電話がかかってきた。

指導する時はこっちから連絡するって言っておいたのに、ガン無視して電話かけて来るとか言う事を聞かない奴である。


無視してもよかったが――


「もしもし」


―—出るまで何度もかけて来るうざい行動されても叶わないので、一応出ておく。


「師匠!」


乾巧は興奮している様だった。

偉い興奮のしようだ。

ひょっとして、宝くじでもあたったのか?


「どうした?」


「凄いです!」


「何が?」


「魔力が増えました!」


「……そうか」


果てしなくどうでもいい報告をありがとう。

しかしこの興奮のしようだと、かなり魔力が増えたみたいだな。


「どれぐらい増えたんだ?」


ちょっと気になったので尋ねてみた。


「1割です!1割も増えました!」


たった1割かよ。

と言いたい所だけど、2日で1割ならきっと凄い事なんだろう。

でなきゃこんなに興奮する訳ないし。


「まあ、引き続き精進する様に」


「はい!俺、頑張ります!!」


電話を切る。

コミュ障なので他人と不必要に関わるつもりはないが、上手く進むのはなんだかんだ気持の良い物だ。


「ちっ、誰がボスを狩りやがったんだ」


「面倒くせぇな」


「だりー」


ゲートからガラの悪い3人組が出て来た。

どうやらボス狙いだった様だが、俺がサクッと倒してるので彼らは空振りという訳である。

基本速い者勝ちだからな。


因みに、Dランクともなれば余裕で生活していける稼ぎが出せる。

俺もボスこみなら30万円分ぐらいの稼げてるし。


なら、Dランクで狩りをしてれば問題なく生活できる?


まあそうではあるな。

けど、試してみたいじゃん。

自分の力がどれぐらい通用するのか。

せっかく頑張ってイフリート達倒した訳だしさ。


「あん……」


いかつい3人組の1人が俺の方に近付いて来たかと思うと――


「お前、ひょっとして山田か?」


そしてそいつは俺の苗字を口にする。


誰だ?

そういやどこかで見た事のある顔の様な気が……


「ああ、やっぱ山田だわ」


「あんた誰だ?」


「おいおい、忘れちまったのかぁ?この佐藤高貴さとうこうき様の事をよ」


佐藤高貴。

ああ、そうか。

コイツ佐藤高貴か。


目の前の男の事を思い出す。

忘れる訳もない。

学生時代俺をずっと虐めてた奴で。


そしてこいつをボコボコにして怪我をさせた結果、俺は悪者に仕立て上げられ引き篭もる嵌めになったんだからな。

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