第7話
アゼルにとってアルベールと一緒にいることは、救いとなっていたのだ。なぜ彼がこれほどアゼルと関りを持とうとしているのかはよくわからない。それでも、アゼルの苦痛を少し和らげていることは事実だった。だから感謝していたし、これからも関わっていきたいと思っていた。会ったばかりの人間なのに、不思議と親密に感じるのだ。
王宮の者たちとは違った。宮殿の中で、彼は孤立感を覚えていた。それもそうだ。アゼルは今の今まで彼らと関りがなかった。しかし使用人たちは、すでにコミュニティーを形成して、互いに親しげに関わりあっている。
アゼルは試しに、隠密行動をするときのように、特殊な歩行と魔術により気配を消して宮殿内を歩いてみた。自分自身の拠点でこんな敵地に侵入したかのような真似をしていることに一種の滑稽と悲しさを覚えたが、気になるものは気になるから続けることにした。すると、使用人たちは、ほうきを動かしながら親しげに話していた。そのお皿はこっちに置いてください、なんていう事務的なやり取りの中にも、確かに親しみの気配が混じっていた。気配を消すのをやめてみる。すると、彼を見つけた使用人たちは、姿勢を正して彼が通り過ぎるまで頭を下げていた。別に、礼儀正しくされることに対して疎外感を覚えているわけではない。無論皇帝に対しては礼儀正しくしなければならないことはわかっているから、特に思うことはない。しかし、人の表情・感情を読み取ることを得意とするアゼルには、敬いの気持ちというよりも、恐れや、まだよく知らないものと距離を置こうとするような心理を読み取ったのだ。それが、彼に孤立感を与えている。ここにいると疲れるような気がした。
その日の夜、部屋に戻って本を開いてみたはいいものの、あまり集中できなかった。今日のアルベールとの会話の中での出来事、ガイストの扉がアゼルには存在しないということがわかったことや、魔術の仕組みについて、王宮の中で感じる疎外感などが、彼の意識を手元の本から引きはがしていた。
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