第15話 マリアを野放しにしすぎた様だ~ライアン視点~

俺の夜会デビューから3ヶ月後、ついにマリアの夜会デビューの日を迎えた。


美しい銀髪に宝石の様な赤い瞳をしたマリアは、はっきり言ってどの令嬢よりも美しい。さらにぱっと見クールに見える事から、令息たちからは、高嶺の花と呼ばれている。


まあ俺が、令息どもが気軽にマリアに近づかない様に


“マリアは理想が高く、そこら辺の令息は眼中にないから、話しかけてもあしらわれるだけだ”


と吹き込んでおいたのだ。


そのお陰か、ヘタレの令息たちは、マリアに近づくのをためらっている。とは言っても、マリアとダンスを踊りたくて勇気をもって話しかけてくる令息もいるかもしれない。そんな思いから、すぐにマリアを捕まえよう。そう思っていたのだが…


会場に到着すると、早速マリアを探した。でも、両親と一緒に貴族に挨拶をしている。これは少し時間が掛かりそうだな。しばらく待つ事にした。


ふとマリアの方を見ると、さっきまで両親といたのに、姿が見えない。急いでマリアの両親の元へと向かった。


「おじさん、おばさん、マリアの姿が見えないが、どこに行ったんだ?」


「マリアなら暇だから中庭を見てくると、出て行ったよ」


何だって?あいつ、ウロウロとしやがって。迷子になったらどうするんだ。それに王宮とは言え、1人で出ていくなんて。また誘拐されたら大変じゃないか!」


急いで中庭に出ようとした時、マリアが戻ってきた。よかった、無事だった様だ。早速マリアを捕まえ、ファーストダンスを踊る。幸いマリアはまだ誰とも踊っていなかったらしい。


ダンスを踊っている時、ふとある視線に気が付いた。視線の先には…


王太子殿下だ!真っすぐマリアを見つめる王太子殿下。どうして殿下がマリアを見ているんだ?


なんだか嫌な予感がして、殿下の死角になる様、マリアを誘導する。もしかしてマリアは、殿下と…


そんな思いから、マリアにお妃候補になりたいのか?と聞いた。すると、私は私だけを大切にしてくれる人と結婚したいから、王族には興味がないとはっきりと言ったのだ。そうか、自分だけを大切にしてくれる人か…それって、まさに俺の事じゃないか。


もしお妃候補にでも名乗り出られたら、もう俺には手出しが出来なくなる。マリアが王妃に興味がなくてよかった。


それにしても、久しぶりに見るマリアは本当に美しいな。よく見ると、令息どもがチラチラとこちらを見ている。ダンスが終わっても、マリアは俺の側に置いておこう。そう思っていたのだが、ダンスが終わった途端マリアを跳ね除け、俺の周りを囲む令嬢たち。


何なんだよ、こいつら!

俺が令嬢に苦戦している間に、友人たちの元に行ったマリア。結局俺は令嬢たちから逃げるのに必死で、その後マリアとは過ごせなかった。ただ、マリアをダンスに誘う猛者はいなかった様で、ホッとした。



その日を境に、俺は時間を見つけてはマリアの家を訪ねた。マリアを守るためとはいえ、少し騎士団に力を入れすぎてしまっていた様だ。これからは、マリアとの時間も大切にしないと。


そしてマリアが夜会デビューしてから、1ヶ月が過ぎた頃だった。


「ライアン、どうやら王太子殿下が、マリアに興味を抱いている様なんだ。さっきレィークス侯爵が来てな。明日マリアが王宮主催のお茶会に誘われた様だ。でもそのお茶会は、お妃候補に名乗りを上げている令嬢が呼ばれているらしいんだ」


「どういう事だよ、父上。マリアは王妃に興味がないと言っていたぞ」


「それが、王太子殿下がどうしてもマリアと話しがしたいと言っているらしくて…お茶会くらいならいいかと、レィークス侯爵も考えた様なんだ。マリア自身も王妃に興味がないのだから、大丈夫だろう」


「何が大丈夫なんだよ!万が一マリアがその気になったらどうするんだよ」


「その時は仕方ないな、ライアン、マリアは諦めろ」


「ふざけるな!誰が諦めるか!とにかく、今からマリアの家に行ってくる」


急いでマリアの家に向かおうとしたのだが…


「もう夜も遅い。明日にしなさい!ラアイン、そんなに心配しなくても大丈夫だ。ほら、もう寝ろ。明日も騎士団の稽古があるんだろう?」


そう言うと、俺を追い出した父上。とにかく明日朝一で、マリアの家に向かわないと。


そして翌日

朝からマリアの家に向かった。俺の姿を見るなり“ライアンはお茶会にいかないの?”と聞いてくるマリア。


こいつ、何を言っているんだ。そんな思いから、今日のお茶会は、限られた令嬢しか呼ばれていない事を教えた。すると、どうやらおじさんから話を聞いていなかったみたいで、顔を真っ赤にして


「私は王族と結婚なんてするつもりはないわ…そもそも王族の方から、お妃候補を決める事は出来ないはずよ。令嬢から打診されて、初めて審査されるのだから!」


そう叫んでいた。どうやらマリアは、本当に王妃に興味がない様だ。とにかく夕方来ると言い残して、騎士団へと向かったのだった。

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