第12話 クラスの皆と仲良くなりました

先生の話しが終り、今日はもう家に帰れるらしい。ふとヒューゴ様の方を見ると、早速お妃候補に名乗りを上げている令嬢たちに囲まれていた。別のクラスや学年からも令嬢たちが集まってきており、総勢10人程度がヒューゴ様を囲っていた。


昔は私もあの輪の最前線にいたのよね。本当によくやっていたわ…


「王太子殿下の周り、すごい事になっているわね…」


話しかけてきたのは、リリアだ。


「本当ね…私、絶対に関わりたくはないわ…」


ついポツリと呟いてしまった。


「マリア、またボーっとしていると、お妃候補予備軍たちに絡まれるぞ。ほら、さっさと来いよ」


なぜか私の手を掴むライアン。


その時だった。


「ライアン、彼女が噂の幼馴染の、マリア嬢だろう。初めまして、俺はライアンと同じ騎士団に所属している、ジャックです。これからよろしくね」


「俺はジンだ。せっかく同じクラスになったのだから、仲良くしようぜ」


まあ、令息だわ!令息が話しかけてきてくれるなんて。早速私も挨拶をしないと。


「初めまして、私はマリア・レィークスです。こちらこそ仲良くしてくださいね。それから、こっちが友達のリリアとミリアナです。そうだわ、せっかく同じクラスになれたのですもの。皆で今から街に出ませんか?一緒に昼食を食べながら、仲を深めましょう」


これはチャンスだ。こうやってクラスの令息と仲良くなれば、私にも素敵な殿方が見つかるかもしれない。


「おい、マリア。お前は何をバカな事を言っているんだ!ほら、さっさと帰るぞ」


なぜかご機嫌斜めのライアンに腕を引っ張られ、そのまま教室を出ようとした時だった。


「待てよ、ライアン。別にいいじゃん。せっかく同じクラスになったんだし、マリア嬢の言う通り、皆で飯でも食いに行こうぜ。リリア譲とミリアナ嬢もいいよな」


「「ええ、もちろんですわ」」


「それじゃあ決まり。おい、今から皆で飯食いに行くぞ。行く奴ついてこい」


ジン様の掛け声で、何人かの令息や令嬢たちも付いて来た。結局クラスの半分くらいの人数で、街に出る事になった。


「人数が多いから、馬車に乗り合わせていこうぜ。店は俺たちのお気に入りのところでいいか?」


「ええ、もちろん大丈夫ですわ。それじゃあ、リリアとミリアナは家の馬車に乗って」


「じゃあ俺とライアン、ジンが馬車を出そう。令嬢たちも、それぞれ乗り合わせてくれ」


ジャック様の指示で、皆それぞれ馬車に乗り込んだ。


「入学早々、クラスの皆とこうやってお出掛けなんて、なんだか楽しみね。マリア、あなた雰囲気が変わったわね。今まではどちらかと言えば、あまり周りを寄せ付けない感じだったのに」


「そうだったかしら?そんなつもりはなかったのだけれど。ただ私は、学院生活を楽しみたいのよ。それに、素敵な殿方も見つけたいし」


「もう、一体どうしちゃったのよ。素敵な殿方を見つけたいばかり言っているじゃない。大丈夫よ、あなたは黙っていても、すぐに見つかるから」


何を根拠にそんな事を言うのだろう。そもそも私は王宮で6年間、ずっと1人で過ごしていた、誰からも愛されない女なのだ。そんな私に近寄ってきてくれる殿方なんて、いるのかしら?


しばらく走ると、大きなホテルの前で馬車が停まった。


「ここのホテルの様ね。さあ、降りましょう」


馬車から降りると、そのままホテルの中に案内された。


「ここ、俺の父親が経営しているホテルなんだ。領地の食材をふんだんに使った料理が旨いんだぜ」


そう教えてくれたのは、ジン様だ。ジン様の家は確か侯爵家だったわね。侯爵家が経営するホテルか。だからこんなに立派なのね。


最上階のホールに案内された私たち、早速席に付く。左にはリリア、右はライアンだ。なぜか機嫌の悪いライアン。ジト目で私を睨んでいる。


「ライアン、どうしたの?何を怒っているのよ」


「別に怒っていない」


プイっとあちらの方向を向いてしまった。絶対怒っているじゃない、何なのよ、全く!


「なあ、ライアンとマリア嬢は、いずれ婚約をするのか?」


ふとジャック様がそんな事を聞いて来た。


「私たちはただの幼馴染ですわ。それにライアンは騎士団にしか興味がない様なので、私たちが婚約を結ぶことはあり得ないです」


やっぱりヒューゴ様が言った通り、皆誤解をしているみたいなので、しっかり解いておいた。変な誤解をされて、素敵な殿方が逃げて行ったら大変だものね。


「おい、どうして俺が結婚しないみたいになっているんだよ!そもそも俺は、ディファースティン侯爵家の嫡男だ。いずれ結婚して、爵位を継ぐ予定なんだ!」



なぜか怒られてしまった。でもあなた、1度目の生の時は侯爵の座を弟に譲って、自分は独身を貫いていたじゃない!そう言いたいが、もちろんそんな事は言えない。


「とにかく、マリア嬢とライアンは恋仲ではなく、ただの幼馴染で、ライアンには結婚する意志があるという事でいいな。お前たちの話しはもういいよ。さあ、せっかくだから皆で仲を深めようぜ」


どうやらジャック様がうまくまとめた様だ。でも、話しを振っておいて、お前たちの話しはもういいよはなんじゃないの?そう思ったが、これ以上深追いするのも面倒だし、まあいいか。


その後は皆で美味しい食事を頂きながら、話しに花を咲かせた。令息はもちろん、令嬢たちとも仲良くなれた。


入学早々、いいスタートが切れたわ。このままいくと、楽しい学院ライフを迎えられそうだ。

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