おやすみ。さくら

三丈 夕六

最初の日

 ねぇ。


 ねぇってば!



 そこのアナタよ。アナタ。



 なんで窓からじっとこっちを見てるのよ?


 わかった。私がかわいいからって見惚れてたんでしょ?


 モジモジしてるだけじゃ分からないわよ?


 こっちに入ってらっしゃい。



 ……入ってこれないの?


 ……そう。



 じゃあお話しましょう!



 またモジモジしてる。


 しょうがないわねぇ。それじゃあ私がお話してあげる! アナタは聞いていて。



 私たちはね。ここで生まれ育ったの。私以外にも沢山、子どもたちがいるのよ?


 そしてね。みんな待ってるの。新しい家族が迎えに来るのを。


 でも、私は他の子たちと違う。みんな、物事を深く考えていないのよ。


 何を言っても「あそぼう! あそぼう!」って。そればっかり。


 もう嫌になるのよねぇ。



 私だけ体も大きいし。



 だからね。私はきっとお姉ちゃん先生なのよ。


 お姉ちゃん先生はね。私達に色々なことを教えてくれるの。勉強だけじゃなくて、マナーなんかもね。


 私、お姉ちゃん先生大好き! だって、毎日すごくお洒落な格好してるのよ? カッコいいんだから。私も大きくなったらあんな風にお洒落したいなぁ。



 話、逸れちゃったわね。



 何が言いたいかって言うと、私はお姉ちゃん先生になる為にここにいるのよ。


 他の子たちの面倒を見て、みんなを送り出すの。だから、ずっとここにいるのね。



 だから平気なの。



 え? もう帰っちゃうの?


 そう……。


 また、来てくれる? 



 ……答えてくれないのね。



 それじゃあね。



 また、いつか。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る