第7話
色々と衝撃の事実が発覚した。
姫の6才以前の事はそこまで詳しくなかったから、生まれた時から冷遇され、5才から凛星宮に移り後継者教育を受け始めたとしか情報がなかった。
まさか虐待をうけていたとは·····
あのような発言をする王妃ならやりかねない。
だが今、侍従長が接触してきた意味がわからない。
もしかしたらと想像は出来るんだが·····
「若、少し離れます。」
「ああ·····」
若も思うところがあるようだ。
侍従長の部屋に入るとソファに深く座り、疲れたように目を閉じている。
「貴殿の目的が知りたい。」
驚いた様子もなく目を開ける。
「姫の記憶の蓋の確認です。」
此方を見ずに答えを返してきた。
「貴殿を見て開くかどうかか?」
「ええ。これからアラミスは血眼になって姫の弱みを探し出す。私に辿りついた時、確実に人質にするでしょう。
姫の記憶が強固なら問題がなかったのですが·····」
かなり問題があった。
あれ程の取り乱しようだ。
アラミスはこの男を人質にし、姫の記憶を揺さぶって自分の陣営に取り戻そうとするだろう。
姫もそれを受け入れる。
「どうするつもりだ。」
「まだやる事があるので、それが終わってから始末をつけるつもりです。」
他人事のように言うな。
もう自分の命を手放しているようだ。
「姫が悲しむ。」
「側に貴方の主がおられる。」
「それでもだ。」
侍従長はククッと笑い、初めて此方を見た。
「私がなんの為にこの地位にしがみついていたと思います?
これからくだらない三文劇が始まるのですよ。」
·····間者の話では毒にも薬にもならない男だと報告があった。
だがこの男は毒の塊だ。
元々そうだったのか、姫と関わりそうなったのか。
何を言ってもこの老侍従の考えを変えることは出来ない。
出ていこうとすると、呼び止められる。
「アイシェバールの三男は好きにしてかまいませんが、アイシェバール家には手出しするより手を結ぶ方が得ですよ。姫がスードに落ち着いてからでも検討してみて下さい。
ではさようなら。」
こちらの返事などどうでもいいようだ。
私もなにも返さずに部屋を出た。
一つだけ分かった。
姫の男の趣味は最悪だ。
まともなのが1人もいないって何なんだ。
若がまともに見えるんだぞ!
部屋に戻れば寝ている姫にキスしまくってる変態がいた。
「若·····」
舌打ちして此方を見ないで下さいよ。
隣の部屋で侍従長との会話を話した。
「アイシェバールの三男といい侍従長といい、ユリィの周りはまともなのが居ないのか。」
そこに何故自分を外すんです?
ここに来るまでおかしな男筆頭は貴方でしたよ。
「侍従長にはアラミスもアイシェバールも間者をつけているでしょう。これ以上の接触は危険です。」
こちらも間者を付けるが成り行きを見るだけにしておこう。
どうせこれから王城にわんさか間者が送り込まれるだろうから、下手に介入すればいらぬ争いに巻き込まれる。
「姫を連れて行って大丈夫でしょうか?」
姫の弱さを目の当たりにし、不安材料ができた。
あれ程壊れやすい心を持っていたのは誤算だ。
「ユリィが大事にするのは血じゃなく心の繋がりだ。
なら俺がユリィの全てになれば問題ないだろう。」
ん?何かおかしな発言がでた。
姫を監禁でもする気ですか?
「貴方の家族も姫は大事にしてますよ。」
「んー、会わせなかったら忘れるかなぁ」
いやいや、ちょっと待って下さいよ。
何考えてんですか?!
「姫は物覚えがいいですよ。
それに心配しなくても若が一番ですよ。」
ここはヨイショしとこう。姫の未来のためにも。
若、考え込まないで下さい。
さっき一番まともな男だと思った私の気持ちがぐらつきます!
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