第87話

「ジョン様、ギル達が捕まったようです!」


男の仲間達が慌ててジョンの元に駆けつけた。


「あいつらは何かやったのか…」


ジョンはため息をついた。

外からくる侵入者の警備をさせていたがどうも盗賊のような真似事をしているようだったからだ。


やめるように注意しても言う事を聞かず、いつかこうなるのではないかと危惧していた。


「それが、襲った相手に返り討ちにあい、捕まってこちらに向かっているようです」


「何だと?どこの誰に?」


「馬車の紋章からアルゴラ国かと…」


「アルゴラ国だと…」


ジョンは拳をギュッと握りしめた。


「すぐに戦闘態勢に入れ!俺も行く」


ジョンはすぐに立ち上がった。


城の中に反乱軍の本拠地を構えるジョン達は急いで城下の方に向かった。


するとギル達が先頭に歩きながらこちらに向かってくる馬車が一台見えた。そのまわりに数人の兵士が馬車を守るように配置されている。


「止まれ!」


ジョンは剣を抜くと仲間達に指示を出す。


街並みを利用して後ろに回り込み馬車を包囲した。


「ジョン様!この人達は敵じゃないです!」


ギルは慌てて今にも攻撃しそうなジョン様に大声を出した。


「その縛られている手はなんだ!?そんな事をされて敵で無いと言えるのか!」


「こ、これは…自分達から襲ったので当然の対応です。それよりも大変な事が!ロレッタ様が、ロレッタ様が生きていたのです」


「ロレッタ様が?」


ジョンの剣に迷いが出た。


ピリついていた空気が少し和らぐと、不機嫌な顔のフレッドが馬車から降りてきた。


「あなたは…」


ジョンは再び剣を構え直す。


「争うつもりは無い…今はな…」


フレッドは語尾を小さく声をかけると、ジョンらしき男をチラッと見つめる。


「この者達にここまでの案内を頼んだ、我々は後ろに君達倍の兵力を控えさせている。それを連れてきていないのでその証明にはならないか?」


フレッドはジョンに問いかける。


「ジョン様、この方の言っていることは本当です!俺達は兵士に取り囲まれて捕まりましたから」


ギルの必死な様子にジョンは剣を下ろした。


「先程ロレッタ様が生きてると聞いたが…それがもし虚言ならすぐにでも攻撃を開始する。たとえこちらが皆殺しにあったとしても…」


剣は下ろしたがその拳にはまだ力がこもっていた。


「ふん、なら自分の目で確かめろ」


フレッドは嫌そうに馬車を見つめると合図したかのようにロレッタがあらわれた。


「ジョン様、お久しぶりです。もう覚えておられないかもしれませんが…」


ロレッタはすまなそうに眉を下げてジョンに微笑んだ。

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