第80話
「それでは失礼致します」
ロレッタは陛下に挨拶をして部屋を出ていった。
フレッドにはまだ陛下が話があるというので自分だけ先に部屋へと帰ることになった。
ロレッタが居なくなるとジロっと窘めるような顔で息子を睨んだ。
「少しは我慢出来んのか…」
はぁーとため息をつかれフレッドは真面目な顔で言い返した。
「無理だ、ロレッタの事になるとどうも周りが見えなくなる。それも悪くないと思ってしまうからタチが悪いな」
その言葉を聞いてヤレヤレと陛下は頭を抱えた。
「やはり二人では無理そうだな…シド予定通りお前もついて行きフレッドの事をよく見ておくように」
「はい」
シドは仕方ないと頷いた。
「シドか、いつも悪いな」
フレッドはシドをみてすまなそうに頭を下げた。
「ひい!フレッド様何か悪い物でも食べたんですか!?どこか痛いところは!誰か医者を!」
シドは素直なフレッド王子に鳥肌が止まらなかった。
慌てて医者を呼びに行こうとする。
「お前、人が素直にお礼を言ったのに…私をなんだと思ってる」
フレッドはシドを睨みつけていた。
「あれ?いつものフレッド様だ…大丈夫ですか?私の事わかります?」
恐る恐るフレッドに近づいていく。
「この野郎!」
フレッドはシドを羽交い締めにすると後ろから首を絞めた。
「ま、待って!すみませんでした!」
シドが慌てて謝るとフレッドが手を緩める。
「全く、冗談が通じないんだから…」
シドは絞められた首を擦りながらブツブツと文句を言いながら身だしなみを整えてフレッドに向き合った。
「まぁフレッド様も成長しているということは喜ばしいですね」
わざとらしく頭を下げた。
「そうだな!!これからも頼むぞ!」
フレッドはシドの背中をバンバンと笑顔で叩いた。
「痛いですよ!くそ、ロレッタ様と二人っきりにならないように予定組みまくってやる…」
シドはフレッド様に見つからないようにじっと睨みつけた。
「うむ、こちらも相性が良さそうで何より」
陛下は満足そうに二人のやり取りを眺めていた。
「これが相性いいだと…」
「最悪だな」
フレッドとシドは珍しく意見があった。
陛下から細かい用件も聞いて、フレッド達は準備が整い次第コスリガ国に向かう事となった。
疲れた体で部屋へと戻ってくると、シドはそそくさと準備があると別れる。
「フレッド様、何かありましたか?」
部屋に入るなりロレッタが心配そうな顔で出迎えた。
「いや、なんでもない。ロレッタ、我々は準備出来次第元コスリガに向かう事となったが大丈夫か?」
心配させないように笑顔で聞くと、ロレッタも表情が緩んだ。
「はい、私は荷物も少ないですし何時でもついて行きます」
ロレッタの笑顔にフレッドは癒される思いだった。
「ありがとう、では一週間後を目処に向かう事にする」
「はい」
「でもその前に…」
フレッドは今の疲れをもっと癒してもらおうとロレッタに抱きつこうとすると…
「では、早速準備に取りかかりますね!」
ロレッタはスっとフレッドから離れて自分の部屋へと向かった。
「ロ、ロレッタ?」
フレッドは手を伸ばすとロレッタは振り返ってその手をギュッと握りしめる。
「フレッド様の足でまといにならないようにしっかりと準備致しますね」
キラキラと見つめる瞳にフレッドは頷くしか出来なかった。
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