第78話
陛下は部屋に入るなりシドさんに手招きして何かを囁く。
シドさんは頷くと部屋を出ていってしまった。
ロレッタは陛下とフレッド様と三人になり緊張する。
これからどんな沙汰を出されるのかと身構えて固くなっていると
「ふふ、そんなに緊張するな。ここには私達だけだから楽にするように」
陛下が先程の真面目な様子から一変して笑顔をみせると椅子に腰掛けた。
そして近くの椅子を指さして座るように促してくれる。
「ロレッタ、座ろう」
フレッド様から座るように言われて、頷き隣に腰掛けた。
するとフレッド様が姿勢を正して陛下に向き合い軽く頭を下げる。
「父上、先程も言った通り私達も責任を取ります」
フレッド様の言葉に面倒そうに手を振った。
「わかった、わかった。とりあえず真面目な話の前にお茶にしよう、今シドに頼んでいる」
するとタイミングよくシドさんがお茶を持って部屋に戻ってきた。
「ありがとうございます」
お茶を陛下から順に入れてくれる、私にもカップを差し出されてお礼を言って受け取った。
冷たくなっていた体に温かいお茶が染み渡る。
ほっと息を吐くと、陛下が微笑み見つめていた。
「す、すみません…」
ロレッタは慌ててお茶を置いた。
「いや、ようやく顔色が戻ったな」
「えっ」
ロレッタは自分の頬をそっと触る。
気が付かなかったがそんなに顔色が悪かったのだろうか?
「ロレッタいいか、フレッドのそばにいるということは王族に再びなるということだ。そうなればあのような妹や婚約者の裏切りもよくある」
ロレッタは頷く、身に染みてそれは感じていた。
「しかし、フレッドのそばにいることを選ぶのなら強くならなきゃならん。あのような輩を平気で跳ね除けられるようにな…」
「父上…まさかこの茶番はワザと?」
フレッドはじっと父親や見やる。
陛下は笑いながらフレッドを見つめ返した。
「それもあるがお前達があのような者達を野放しにしていたのも事実だぞ、その責任は取ってもらう」
「もちろんです」
ロレッタか答えた。
「ではこれからお前達には無くなったコスリガ国へ行きあの国を復興させよ。それが今回の事を引き起こした罰とする」
「「えっ!」」
フレッドとロレッタは驚き顔を見合わせる。
「父上、それは…」
「あの国に援助していた金を取り戻してこい」
有無を言わさずに言われた。
「でも、それでは私の罰にはならないような」
ロレッタはチラッとうかがうように陛下とフレッド様を見つめた。
「あの国を一から立ち上げるのは並大抵の努力では足りん、私にはそこまでの優しさも義理もあの国には持ち合わせていないからな」
「それで私とロレッタに…」
「ああ、しかしロレッタ嬢は報告によるとどうも優しすぎると聞いていてな、あいつらと対面させて様子を見たかったんだ、それによってはこの事を任せる訳にはいかないからな」
「それで結果は?」
「まぁギリギリ合格だな」
「すみません…」
ロレッタは申し訳なさそうに謝った。
「ロレッタ、フレッドの隣に居たいのなら強くなれ。お前の甘さが国を滅ぼす事もあるということを自覚するんだ」
陛下の言葉が胸に突き刺さった。
「はい」
ロレッタは頷き陛下を見つめ返す。
その表情をみて陛下はニコッと笑いかけた。
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