第59話
ロレッタはしばらくするとそっとフレッドから離れた。
顔をあげるとその瞳が少しだけ赤くなっている。
「ありがとうございます。それで私はどうすればよろしいでしょうか?このままコスリガ国へ帰った方がよろしいならそう致します」
ロレッタは覚悟は出来ているとそっと涙を拭って笑った。
フレッドはロレッタの言葉に驚きの慌てて否定した。
「何を言ってる!ロレッタはもうアルゴラ国民だ、私のそばに居ればいい」
そう言って強く抱きしめられてロレッタは嬉しそうに笑うが首を横に振るとその体を離した。
「いいえ、私はこのままでは国が滅ぶかもしれないとわかっていて何もしませんでした。両親と同じく民達のお金で生活をしていたのです。それなら私も罰を受けるべきです」
フレッドはロレッタの手を掴むとその手は小刻みに震えていた。
その手をそっと包み込み優しく声をかける。
「ここに来た時はやせ細り、心が疲れきっていたのにか?君が何もしなかったとは思えない…どうせあの馬鹿な王子達が話も聞かなかったんだろ…」
最後にはあの顔が思い出されて悪態をつく。
「フレッド様…あの場にいたのですか?」
まるで見ていたかのような言葉にロレッタは驚いた。
「やはりそうか…ロレッタの話を聞いてるだけで想像つく」
「ですが…」
まだ何か言おうとするロレッタの唇に手を当てた。
「優しい君が心を痛めるのはわかっていた。だからこのままこの事は話さないでいようかとも思っていたんだ。しかしそれではロレッタも納得できないだろうと話す事にした。そう思ったのは君が強くなったからだ、君はこの国に来た時点でアルゴラ国の為に生きる事になった。もしコスリガ国に何かしたいのであればアルゴラ国の者としてすればいい」
「アルゴラ国の者…」
「君がこの国に来たからこそできることもあるだろう」
ロレッタはフレッドを見つめて頷いた。
「そうですね…私はアルゴラ国の王子フレッド様の物、勝手に自分の命を軽んじて申し訳ございませんでした。私は私にできる範囲でコスリガ国の犠牲になった者を助けたいと思います」
フレッドはそれでいいと頷いた。
「ああ、それなら私も力を貸そう。シドからもこの国にコスリガ国から逃げて来た者も多いと聞いた。それはロレッタがこの国に来たからなのではないか?」
「私が…」
「民達の中には君を頼りに来たものもいるだろう。君は君のできることで助ければいい…」
「フレッド様…ありがとうございます」
ロレッタは我慢していた涙がまたこぼれた。
フレッドはそれをそっと拭ってやる。
ロレッタは少しして落ち着くとフーと息を深く吐いた。
「大丈夫か?」
ロレッタの様子をうかがい顔を覗き込むと、顔には笑みが戻っていた。
「はい、私…この国に来てフレッド様のお相手に指名されて本当によかった。心からそう思います」
ロレッタの震えはいつの間にか止まっていた。
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