第54話

「レミリア?」


ジョージはエミリアの様子に声をかけるがエミリアは目の前の男を見つめたままボーッとしている。


「どうしたんだ!」


レミリアを揺するとハッとしたようにジョージの後ろに隠れるが、チラチラと男の姿を確認している。


ジョージも気になり男を見る、身なりは最初に入ってきた話を聞いた男と同じようだが、体格がかなりいい。


見た目も悔しいが負けていた。


ジョージはレミリアを後ろに下がらせて男から見えないようにすると…


「それで、話は通ったのかな?」


姿勢を正して落ちはらった様子で話しかけた。


「いえ、それがまだいくつか確認したい事ができまして…この方ともう一度お話を伺います」


「この方と?」


レミリアが頬を染めながら長身の男を見上げた。


「フレッドと申します…いくつか話を聞かせて下さい。なぜこの国に来ようと思ったのですか?」


「そりゃロレッタがいるからだ!」


ジョージの言葉にフレッドは拳に力が入る。


「ロレッタ…様と呼んで頂けますか?彼女は今はこの国の客人としてもてなしておりますので…」


「「えっ…」」


ジョージとレミリアは驚き固まる。


「お、お姉様が客人?何かの間違いでは?だってこの国には…その…捕虜の様な感じだと聞きましたが…」


「へぇ…よくご存知で、捕虜とわかっていてあなた方は大切な家族や恋人を他国に送ったのですか?」


「そ、それは…」


レミリアが下を向く。


「仕方ない事だ!ロレッタもわかって行ってくれた。だからこうしてきてロレッタと話がしたいと…」


「ロレッタ…と呼び捨てにするなと…」


フレッドは拳を握りしめて一歩前に出た。


「え?」


「あー!いえー!なんでもありません!」


シドが大きな声を出して誤魔化す。


「フレッド…さ、ん落ち着いて話を聞きましょうね~」


フレッドを後ろに下がらせる。


「わかっている…」


フレッドはフーっと深く息を吐いた。


「あの…お姉様は今この国で幸せなのですか?それは…あなた様のおかげなのでしょうか?」


レミリアはうるうると瞳を揺らしながらフレッドのそばに行くとその手を掴んだ。


両手でギュッと握りしめて、見上げる。


「あなた様の様な方がそばにいて姉は幸せに決まってます!私も是非姉におめでとうと伝えたいです。この国で幸せになってねと…」


「レミリア…君はなんて優しい妹なんだ…」


ジョージはレミリアの思いに感動している。


「姉妹愛の為にもロレッタに会わせてくれ、それにロレッタもきっと俺に会いたがってるだろう…彼女が望むのであれば側室として迎えてもいいと…」


バキッ!


「キャッ!」


フレッドのそばにあった椅子が急に壊れた、その音にレミリアはフレッドに抱きついた。

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