第42話

ロレッタ様の寝息がまた聞こえてきてエミリーはほっと胸を撫で下ろした。


まだ体調は戻ってないがいつものロレッタ様のようで安心する。


起きたら何か食べられるように体に優しいスープでも用意してこよう。


エミリーは音を立てないように部屋を出ていった。


「あっエミリーさん」


部屋を出ると兵士達がしっかりと扉の前を固めていた。


「先程はすみませんでした…」


「いえ、私は少し外しますのでしっかりと見てて下さいね」


「もちろんです!今度は離れろと言われても無理やりにでもついて行きます」


「ええ、私もそのつもりよ」


エミリーさんはよろしくね!と兵士達にバンバンと背中を叩いて激を飛びして調理場へと向かった。





エミリーさんが居なくなりしばらく経った後…



「変わりはないか?」


フレッド王子のが戻ってきた。


「「ハッ!」」


「誰も部屋には近づいておりません!今エミリーさんが少し席を外しております」


「わかった、では引き続き頼む」


「はい…ですが王子、そのお怪我は?」


兵士達は王子の顔中にある怪我に思わず聞き返してしまった。


「何かあったのであれば…お供致しますが…」


「これは自分のケジメだから問題ない…だが少しだけ彼女の様子だけ…」


フレッド王子はフラフラっと部屋に入って行くと扉に鍵をかけた。


「王子のあの怪我って…」


「なんか引っ掻き傷に、平手打ちの痕が出来てたな…」


「って事は女性関係?」


「いや、余計な詮索は不要だ。俺達は守る事に集中しよう」


「そうだな…」


そうは言いつつも怪我の事が気になっていた。






フレッドは音を立てないように部屋へと入る…


部屋は薄暗く静まり返っていた。


ベッドに近づくとロレッタが顔色もよく眠っていた。


その様子にほっと胸を撫で下ろす…頬の赤みも消えているので媚薬の効果も切れたのだろう。


起こさないようにベッドに腰掛けて柔らかそうな頬を指でそっと撫でる。


「んっ…」


ロレッタから少し声が漏れた。


起こしてしまったか…と思ったが目が開く気配はない。


そして撫でられてる頬をスリスリと動かして手に擦り寄ってきた。


猫のような可愛い仕草に荒んでいた心が癒される。


今まで関係を持った女性達に話をつけてきていた…泣き崩れる者、怒りをぶつける者、あっさりと了承する者…その一つ一つの思いを受け取り馬鹿な事をしてきたと改めて思い知らされた。


そんな心がロレッタの仕草で癒される…自分の中でロレッタの存在がこんなにも大きくなっていたのだと感じた。


「ん…あれ?フレッド…様?」


「おはよう…ロレッタ。体調は大丈夫か?」


ロレッタは気配に気がついたのか目を覚ました。


「は、はい…休ませて貰ったので…もう」


「どこか体で痛いところはないか?極力優しくしたつもりだが…」


「体…ハッ!はい…大丈夫です…」


ロレッタはフレッド王子との行為を思い出して恥ずかしくなりシーツで顔を隠した。


「本当に大丈夫なのか?無理して我慢してないか?」


「ほ、本当に大丈夫です…少し…その…下半身に違和感があるぐらいで…」


「違和感?どんなだ?」


フレッド王子は真剣な顔で問い詰める。


もし何かあるなら即刻医者に見せなければと考えていた。

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