第23話

その後、我に返ったエミリーさんがテキパキとお茶の支度を整えてロレッタにお茶を用意した。


隣には見たことも無い美味しそうなケーキやお菓子、果物が用意される。


すごい荷物のわけがわかった。


「美味しそう…」


食べるのが勿体ないくらい可愛らしいケーキにお茶の香りが鼻をくすぐる。


「それはよかったです。ロレッタ様の好きな物がわからなかったので色々と持ってきました。お好きな物を食べてください」


「お好きなもの…」


ロレッタは手が止まる。


「どうされました?」


「いえ…私甘い物はあまり食した事が無くて…」


「あら?甘い物はお嫌いですか?」


「いいえ…その向こうでは…食べさせて貰えなくて…」


ロレッタは恥ずかしくて下を向いた。


「それは…」


エミリーさんはにっこりと笑いながらロレッタ様に見えないように拳を握りしめた。


「ではここで好きな味を見つけてみてください。楽しみが増えましたね」


エミリーさんの優しい言葉にロレッタは顔をあげると…


「はい…ありがとうございます」


目を潤ませてお礼を言う。


「では私のおすすめを聞きますか?」


「是非お願い致します」


「ではこちらから…甘酸っぱいベリーをふんだんに使ったタルトです」


赤や黄色、紫などカラフルなベリーが乗ったタルトを差し出される。


「綺麗で食べるのがもったいないですね!」


「でもロレッタ様に食べていただくのを待ってますよ」


エミリーさんがお茶のお代わりを入れてくれるとロレッタはフォークをそっとタルトに指し、小さく一口に切って頬張った。


「ん~」


甘酸っぱいベリーとタルトの上に乗ったクリームの甘さが合わさって何とも言えないハーモニーを醸し出している。


「口の中が…幸せです」


落ちそうな頬を押さえてロレッタはタルトの味を楽しんだ。



美味しそうに食べるロレッタをみてエミリーは嬉しそうにその様子を見つめていた。


その他にもエミリーが薦めるお菓子をロレッタは美味しい美味しいと全て平らげた。


「ふー…ちょっと食べ過ぎてしまったかも知れません」


お腹を押さえてエミリーを見上げると


「ロレッタ様はもう少しお太りになられた方がよろしいかと…このくらい全然大丈夫ですわ」


「そうでしょうか…フレッド王子が不快にならないといいのですが…」


「あら、王子がロレッタ様にお菓子をたくさん食べさせるように仰ったのです。そんなこともし言われたら必ず私に報告してください」


「え?ど、どうするんですか?」


「それは…ただ王子にすこーしだけ注意するだけですからロレッタ様はお気になさらずに…」


「わかりました。もし言われたらその時はよろしくお願い致します」


ロレッタはエミリーさんの言い方にクスクスと笑うと最後のお茶を飲み干した。



楽しいひと時を終えて部屋に戻って来ると…


「今日は王子は公務が忙しいようですね、ロレッタ様はお夕食は…」


「ちょっと無理かも知れません」


先程のお菓子達がまだお腹の中にいる気がしたので、夕食は辞退させて貰うことにした。


「すみません…シェフの方に申し訳ないと謝っておいてください」


「そんな事は気になさらなくて大丈夫ですよ、今日は早めに湯浴みも済ませてお休みになりますか?」


ロレッタはエミリーさんの気遣いにありがたく頷いた。

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