第14話

「ロレッタ様、おはようございます」


私はエミリーさんの声に目を覚ました…


「エミリーさん…おはようございます…」


起き上がるとエミリーさんに笑顔を向けた…ここに来てからいつも優しく起こされる。


しかもなんだかいい夢を見て久しぶりにぐっすりと眠れた。


コスリガ国では婚約破棄をされてからと言うもの落ち着いて眠ることさえもできなくなっていた。


エミリーさんに支度を整えてもらうとまたあの広い部屋のテーブルへと案内された。


また一人で食事かと少し寂しく思っていると…


「今日は王子もご一緒するそうですよ」


私の考えを読んでいたかのようにエミリーさんがそう教えてくれた。


「そう、ですか…」


私は一人ではない食事に自然と笑みがこぼれた。


部屋で王子が来るのを待っていると…


「待たせた」


王子が支度を整えやってくると席に座った。


ベッドの上で見せたラフな格好出なく…王子として身なりを整えた姿は見る女性を虜にするような色気があった。


何故この方が私なんかを…いや、私はものだ。


この方の機嫌を損なわないように人形のようにただ居ればいいのだ…


私は仮面の様な笑顔を被った。


「いえ、私の様なものが王子と食事をご一緒できるなど…大変光栄でございます…」


恭しく頭を下げると王子の顔が歪んだ。


何か良くなかっただろうか…


「なんだその顔は…昨夜ベッドで見せたような顔をしろ」


「なっ!」


そんな言葉に思わず顔を赤らめて下を向くと


「それでいい」


満足そうに微笑まれた。


二人で朝食を食べ始めるがなんだが視線を感じる…


チラッと顔をあげると王子がこちらをじっと見つめていた。


「な、なんでしょうか?私の至らないところがあれば仰ってください…」


たまらずにフォークを置いてしまった。


「いや、何も悪いところなどないぞ。それどころか美味しそうに食べる姿が可愛いなと…見ていたところだ」


「可愛い…そ、そんな冗談を…」


「いえ、冗談ではありませんよ。ロレッタ様の作法は令嬢として問題ありませんわ!それにとても可愛らしいです!」


エミリーさんが自慢するように言ってくれたが…


「はい…これでも王子の(元)婚約者ですから…」


私は苦笑いをした…婚約者として厳しく躾られたのがこんなところで役にたつことになるとは皮肉だ…


「あっ…申し訳ございません」


エミリーさんは失言だと頭を下げた。


「いえ、なんて事はありません。事実ですから…」


私は少しだけ料理を口に運び手を下ろした。







「ふぅ…」


私はため息をついた。


食事はあの後少し気まずくなり、王子はさっさと食べ終えると執務があると仕事に向かってしまった。


私はエミリーさんと部屋へと戻るところだった。


「ロレッタ様…大丈夫ですか?先程はあまり食事を取られていなかったようですが…」


エミリーさんが心配そうに振り返った。


「心配ありがとうございます。大丈夫です、美味しい食事を残してしまってすみません…作ってくれた方に申し訳ない」


「そんな事は気になさらなくて大丈夫です!王子など好きな物しか食べない方ですからね!ロレッタ様は食が細いようなので料理は少なく色んな物を用意する様に言っておきますわ」


「そ、そんな贅沢は大丈夫です。むしろ王子の残りでも…」


「ロレッタ様!!」


エミリーさんが怖い顔で近づいてきた。


「は、はい…」


私は縮こまるとエミリーさんがガシッと肩を掴んだ。


「ロレッタ様にそんな物を食べさせる訳にはいきません!ロレッタ様はもっとご自分を大切になさってください!」


エミリーさん…


真剣な顔で自分の事を心配して怒ってくれる事にロレッタは涙が流れた。


「ありがとう…ございます…」


ここに来て少しだけ自分でよかったと思うことが出来た。

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