第4話 冒険者ギルドに行くと
アイゼンとルナは城門を
アイゼンが城壁に囲まれた都市の街並みを見渡すと、カラフルな建物の壁が目に入った。
大通りに立ち並ぶ建物は高層の木造建築で、窓の多い壁は赤や黄色や水色に
アイゼンは小声でブツブツと感想をつぶやいていた。
「これがアルケド王国の街、領都ジェードか。
「はあ。これがこの地域では普通のなのだろうか。
城壁の下には路上ギルドの大人や子供たちが多数座っていて
すると、ロニーが城門から出てきたアイゼンとルナに向かって声を掛けてきた。
「冒険者ギルドに行くぞ」
「はい」
アイゼンたちは街の中心部にあるという冒険者ギルドに向かった。
ルナはアイゼンの「匂い」と言う小さな声を聞き逃さなかった。
「ロニーさん。匂いがしますけど街の中で動物を
「匂い? くんくん。そんなに匂うかな。こんなもんだろ。確かに
「そうですか」
「森の飼育場の警備の依頼もあるし、街中の豚の散歩の見張りの依頼もあるぞ。あいつら何でも食うし凶暴だからな。住民たちに怪我が無いように見張る仕事だ」
「そうなんですね。それにしてもこの街は道が汚いですね」
「ん? そうか? 他の都市は知らねえが、こんなもんだろ。豚を街の中で散歩させてるから豚が食えるものは食ってるはずだけどな。他にも骨拾いを
「そうですか。そうします」
「お。ルナ、アイゼン。あの店がお
ロニーは指さした先には料理屋があり冒険者で
「はい。覚えておきます」
アイゼンは料理屋を興味深そうに
(外国の料理か。どんな料理があるのか
しばらく行くと二つ目の城壁が見えて来た。
アイゼンたちは街の大通りを通り内側の城壁を抜け、運河の近くにある冒険者ギルドに向かった。
「何か聞きたいことがあれば答えるぞ」
「ありがとうございます。この街には他にどのようなギルドがあるのですか?」
「そうだな。魔術師ギルドや商人ギルド、
「そうですか。それにしても路上ギルドの方が多いですね」
ルナは道の
「そうかもな。ここの路上ギルドはまあまあいいほうじゃないか。領都だからな。竜神教会もしっかりしてるし貴族や富豪の
「そうですね」
「それぞれに事情があって働けなくなり、貧民になり路上で生活するしかなくなっちまう。竜神教会が路上ギルド所属者に対して食事や衣服や住む場所を提供しているが、さすがにすべての面倒は見れねえしな。城壁の近くに座っている連中だけじゃなく竜神教会の周辺でも目にするだろうさ」
「そうですか。治安の方はどうですか?」
「うーん。貧民街に行かなけりゃそこそこじゃねえかな。ルナは行くんじゃねえぞ。
「はい」
「路上ギルドは路上生活者が犯罪を犯さないように組織されたギルドだからな。竜神教会はがんばってる方じゃねえかな。孤児院もあるし」
「そうですか」
「冒険者ギルドに着く前に周辺の状況も教えてやろう」
ロニーはアイゼンとルナにアルケド王国や周辺国家について話し始めた。
「半島のジェード領の南で接しているのが王領だ。
「そうなんですね。勉強になります」
「聞きかじりの情報だよ。俺はアルケド王国や周辺国の歴史については
「ロニーはエルフについては知っていますか?」
「いや。
「そうなんですね」
アイゼンは二人の会話を興味深そうに聞いていた。
(エルフ? どんな種族なんだろ。会えたらいいな)
しばらく石畳の道を歩いて行くとアイゼンたちは街の中心にある広場に到着した。
「着いたぞ」
アイゼンが広場を見渡すと、そこには八角形の形をした広場があり、そこに4つの建物が広場を囲むように建っていた。
4つの建物は冒険者ギルド、竜神教会、役所、魔術師ギルドで、そのすべてが白い石を使った石造りの長方体の3階建ての建物で、屋根は黒い三角屋根になっていた。
また、その周辺には豪華な屋敷が立ち並び、沢山の人たちが広場を行きかっていた。
(おお。中心地なだけあって
アイゼンが周囲の景色をキョロキョロ見ているとロニーが立ち止まっていた二人に声を掛けて来た。
「おーい。二人とも行くぞ」
アイゼンたちは冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドの大きな
「ここが冒険者ギルドだ。そういや来たことあるのか?」
「いえ。まだ行っていません。この街に着いて早々周囲の
「そうか。24時間営業だから一年中扉は空きっぱなしだ。
アイゼンたちは冒険者ギルドの中に入った。
正面には受付と2階に上がる階段があり、左側は飲食ができる場所で多くの冒険者がたむろしていた。
そして右側には冒険に必要な道具が売っている店があった。
受付には女性のギルド職員がいて、アイゼンたちを笑顔で
「よう。アースラちゃん。
ロニーは
「こんにちは。ロニーさん。お
「ああ」
アースラは後ろにいたギルド職員に薬草を渡した。
ギルド職員はすぐに薬草の
「お待たせしました。全部で小金貨3枚ですね。カードに入金しますか?」
「ああ。そうしてくれ」
するとアースラは冒険者カードを台の上に置かれている黒い台にかざした。
「それからアースラちゃん。ここに初めて来た冒険者パーティー『女神』を紹介する。ルナとアイゼンだ。アイゼンはノドを怪我して話せないそうだ。しばらくいるそうだから、よろしくしてやってくれ」
「わかったわ。よろしくね。ギルド職員のアースラよ」
「ルナです。そして彼がリーダーのアイゼンです」
アイゼンは軽く頭を下げた。
「
「攫ってねえって」
「
「脅してねえって。偶然出会ったんだよ」
するとそこにロニーがたまに働いている冒険者ギルドの
「おお。ロニー。
「いや。今から
「へえ。別嬪さんと坊主か。どこで攫って来たんだ?」
「だから、攫ってねえって」
「がはは。そうか。俺はイーヴ だ。ロニーは時々解体所で
「初めまして。ルナと申します。彼はアイゼンです。彼は今事情があって声を出せません」
「そうか。ルナとアイゼンか。よろしくな。解体の手伝いはいつでも
「俺は冒険者として成功するんだよ」
「がはは。期待しているよ。たまには動物だけじゃなく魔獣をいっぱい持ってきてくれよな。じゃあな」
そう言うとイーヴ はギルドの奥に歩いて行った。
「魔獣は無理だって。ルナとアイゼン。俺は右にある道具屋に行くから、用事を
「わかりました」
ロニーは道具屋に向かった。
「さて。ルナさん、用件は何でしょうか」
「はい。オオカミに襲われた冒険者の冒険者ギルドカードを持ってきました」
ルナはアースラに3枚の冒険者ギルドカードを差し出した。
「あら。そうですか。ご苦労様です」
「その方々は何人パーティーか分かりますか?」
「調べますね」
アースラはカードを黒い板にかざした。
「5人組ですね」
「そうですか。残りの二人は見かけませんでしたので
「なるほど。別の場所で襲われたのでしょうね。どこの森ですか?」
「ここから北東にある森の奥地です」
「なるほど。オオカミに襲われたという事ですが、なぜわかったのですか?」
「オオカミの死体を一体だけ見ました」
「そうですか。オオカミは群れで行動しますから、残りがまた冒険者を襲うかもしれませんね。依頼でその森に向かう冒険者に
「オオカミの魔石を回収したのですが、権利は誰にあるのでしょうか」
ルナは魔石をアースラに見せた。
「所有権はルナさんたちにあります。
「はい」
ルナは魔石と冒険者ギルドカードをアースラに渡した。
アースラは魔石を受け取るとまた背後のギルド職員に魔石を渡し査定をお願いした。
アースラはルナのカードを黒い板にかざした。
「ルナさんは第4級なのですね。ルナさんたちはしばらく領都に
「はい。その予定です」
すると魔石の査定が終わった。
「どちらのカードに入金しますか? それとも等分に分けますか?」
「いえ。現金でお願いします」
「わかりました。魔石は魔力属性も一般的ですし、少し小さいので買取の値段は安めですね。買取価格は小金貨5枚です」
ルナは小金貨5枚を受け取った。
「依頼が書かれた
「わかりました」
アイゼンが振り返ると、入り口側の壁一面に無数の依頼書が
「依頼を受けるのためのランクの制限はありませんけど、初めての場所では無理をしないでくださいね」
「はい」
アイゼンとルナは掲示板に向い、掲示板の前に立った。
アイゼンが小声でルナに話しかけた。
「今日はもう街の外には出ないけど、とりあえず依頼内容を見てみようか」
「はい」
アイゼンが依頼書を見ると何やら文字が書かれていたが読めなかった。
「字が読めないな」
「どの様な依頼を探しましょうか? 私が読み上げます」
「そうだなあ。最初は危険じゃない奴がいいかな」
「わかりました」
ルナはザッと壁一面にある依頼書を見渡した。
「薬草採取や魔石のないウサギやイノシシやシカの肉。冒険者ギルドで魔獣の解体の手伝いもありますね。他にはスライムの
「そうなんだ。獣の解体はやったことないから無理だな。ルナは出来そう?」
「はい。お
「そうだよね。ところでスライムって何?」
「ギルドの情報によるとアメーバのような
「なるほど。ん~。今日は休むから明日の朝またここに来て決めよう。まあ、薬草採取になるだろうけど」
「わかりました」
「あ。
「はい」
そこに買い物を終えたロニーがやってきた。
「依頼、何か受けるのか?」
「いえ。今日は受けずに休みます」
「そうか。朝早かったからな。無理はしないほうがいい。今後、お前らはどうする予定なんだ?」
「依頼をこなしながら旅を続けます」
「そうか。しばらくはここを
ロニーは二人の顔を交互に見た。
アイゼンが
「はい。そのつもりです」
「そうか。何か一緒に出来る合同依頼があればいいがな」
「そうですね。その時はよろしくお願いします」
「それはこっちのセリフだな。4級がいると
「そうですね」
「んじゃ、出るか」
「はい」
アイゼンたちとロニーは冒険者ギルドの外に向かった。
冒険者ギルドを出たところでルナがロニーに話しかけた。
「ロニーさんはどこに
「内側の城壁沿いの安宿だよ。俺の
「お
「そうだなあ。女性のルナも泊まるってことは、俺の宿屋はお勧めできねえな。近くにある
「わかりました。行ってみます」
「おう。じゃあここでお別れだな。俺も飯食って宿屋に帰るよ。またどこかで会ったらよろしくな」
「はい。また」
ロニーは料理屋に向かった。
アイゼンは周囲をキョロキョロ見ながらルナに話しかけた。
「
「わかりました。こちらです」
アイゼンとルナは運河に向かった。
しばらくすると
アイゼンたちは運河に到着した。
アイゼンが運河の景色を見渡すと、運河には
運河沿いにもカラフルな建物が立ち並んでいた。
「ここも裕福な人たちが住んでいるのかな。ん?」
アイゼンは走って運河の
「白くないぞ」
運河の水は暗い水色だった。
「海の事ですか?」
「うん。八島の海は真っ白なんだ。白砂でね」
「そうですか。私の知る海の色は青ですね」
「そうなんだ。これが自然な色ってことか」
「そうですね」
アイゼンは運河の水を見ながら河口に向かった。
河口にたどり着いたアイゼンの目の前には広大な海が広がっていた。
「おお。海って初めて肉眼で見たよ。広いなあ。ん。何だあの城は」
運河の
城壁の上から鋭い3本の
「あれが領主の
「そうなのか。すごいな。まあいいか。それよりも海だな」
アイゼンは再び視線を海に戻すと長い間海を見ていた。
「・・・。明日からいよいよ冒険者としての第一歩が始まる。興奮してきたな。よし、宿を探すか」
「はい」
「
アイゼンたちは宿屋を探しに向かった。
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