喫茶馬頭琴顧客リスト

インク瓶のお客さま

その瓶頭に詰まったインクは空色なのだという

どこからどう見ても真っ黒なそれに私が首を傾げていると

「覗いてご覧」とその人は言った


深い深い暗黒の中カチカチと星が光っていた

その人が頭をゆっくり揺らすと星もころりと転げるのだった


空がひっそり目覚める頃

彼のインクも目を覚ます

今日一日を迎えるために

星たちがいっせいに道を開き

透明に満たされた瓶の中

生まれたばかりの太陽が

そろそろと瞼を開けるのだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る