ブラックバイトウィザード

@hajimari

第1話 出会い

 オレは山義 大河やまよし たいが十七歳。

 特に目的もなく毎日をただ無為に過ごしている。 

 その日もピザ屋のバイトの配達中だった。


(あー、なんかいいことないっかな。

 巨乳の女の子が道端に落ちてるとか、

 空から巨乳の女の子が落ちてくるとか、

 まああるとしたら、

 せいぜい届け先に全裸の巨乳の女の子が、

 受け取りに出てくるとかかな)


 そんなことを考えながら配達に勤しんでいた。


(おっと、ここだ、ここ......)


 配達のスクーターを止め、一軒の家に入る。

 その家は大きな門構えの大きな洋館だった。


(しっかし、すごい豪邸だな。

 でも、ここら辺はよく来て知ってるけど、

 こんな家あったっけか。

 インターホンもないし、これ門開くのかな。

 おっ開いた)


 ギィイと大きな鉄の格子の門を押して開け、

 中に入るが、玄関までのアプローチというのか道が長かった。 


(なんだこの家、どんだけ悪いことしたら、

 こんな家住めんの?)


 玄関についたが、呼び鈴らしき物もないので、

 大きなドアについてあるライオンのドアノッカーを叩いて呼ぶ。


「あのー、ピザラットですけどー

 ピザお持ちしました!」


 しばらく待ったが、

 全く中からの応答がなかった。


「ピッツァ、

 お持ちしましたんですけどー!」


 発音を変えてみたがやはり反応はない。

  

(まさか、遅れたと難癖をついて代金払わないつもりか! 

 こんな豪邸に住んどいて許せねえ!

 小市民なめんな!)


 ドアノッカーを叩き、

 ノブを回すとガチャッとドアが開いた。


「およ? 開いてる」


 中に入りできうる限りの大声で呼んでみた。


「ピザ屋ですーー!!

 ミックスピザお持ちしましたーー!!」


 その瞬間バタンと後のドアが閉まった。


「うお!! びっくりした!」


 オレはドアを開けようとするも、 

 ピクリともしない。


「閉じ込められた!!

 いや壊れてんのか!

 この! この! 開かない!

 ダメだ......」


 出ることもできないので、

 仕方なく家にあがることにした。


「すみませ~ん。

 何かドア開かなくなっちゃって」


 やはり反応はない。

 奥の部屋のドアが少し開いている。

 オレは近づき静かにドアの隙間から中を覗くと、

 書斎のようだった壁全体に本棚がある。

 

 その時ふいに匂いが鼻をついた。


(うっ、これなんの匂いだ!?

 生臭い!

 まさか......)


 とっさにオレは考えた。


(まさか死体とかないよな......

 あったらまずい、帰るか、

 いや全裸女性で巨乳だったら......) 


 オレは迷ったが中に入った。

 そこには死体はなかった。


(なんだ......

 なかった)


 が、高そうな絨毯に、

 何かをこぼしたように変色している場所があった。


(これ、この匂い......

 血か!!

 早く警察に連絡しないと......)


「まちたまえ少年」


 突然声をかけられ、驚いて振り向く。

 が、だれもいない。


「なんだ今の声......

 はっきり近くに聞こえたのに、誰もいな......」


「いるさ」


 オレは理解した。

 その声が耳で聞こえてるんじゃないことを......

 そうその声は頭の中に聞こえていた。


「そうだ。

 私は君の頭に直接話しかけている」


「だ、誰だよ!

 どこにいる!?」


「ここさ、机のうえだ」


 書斎の机の上をゆっくり見ると、

 そこにはペン立てや時計やらが置いてあった。

 そして机の真ん中に白くて中に赤い丸がある丸いものがある。

 近づいてみると、それが何かわかった。


「目、目玉!!?」


 それは人の目玉だった。


「ああ、私は目玉だけになってしまったのでね」


 そう頭の中で聞こえた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る