第2話 異変? 進化? 変調……
俺はサバイバル用品と知識の書を手に入れて、次は一階の食品と思ったが、人の多さと棚の空き具合を見てあきらめた。思案をして、近くのスーパーマーケットに行くことを決意する。
建物を出て、車の通れない細い川沿いの道を、てくてくとスーパーマーケットに向けて移動する。ふと見ると、こんな時に川の中で子供が遊んでいるのか? バシャバシャと音がして水しぶきが上がっている。
何か魚でも居て捕まえているのかと、手すりに体重をかけて川をのぞき込む…… 近頃の子供は栄養状態が悪いのか、緑色の皮膚で小汚い腰巻一つで何かを追いかけている…… 耳も尖っているし……。
あれは? 子供じゃない…… よな。
実際を見たのは初めてだが、いろんな挿絵で見たことがある。ゴブリン君じゃないか?
静かに身を引いて、そーっと場所を移動する。うん、俺はなにも見なかった。
予定通りスーパーマーケットに行こう。
いずれ戦うことは有るだろうが、きっと今はその時ではない。
……まあそうだよね。
一匹だけのはずはなく。
人の向かおうとした方向から、カラカラと音をさせながら棍棒を引きずったり、手に持ったお友達? お仲間? 川に居た奴とそっくりな奴らが3匹ほど、曲がり角から、こちらへと向かって来た。
まあ、あそこからは、直線だから俺に気が付くよね。
一応、友好的に、
「お友達は、川にいるよ」
にこやかに言ってみた。
「グギャ」
「…………」
「お友達は、川にい・る・よ」
にこやかに、もう一度言ってみた……。
静かに棍棒が持ち上げられ、前方で俺を囲むように、わずかに広がって近づいてくる……。
ゴブリンの表情は分からないが、俺には薄ら笑いを浮かべて、なんか言ってるぜこの雑魚と聞こえた気がした。
「残念だが」
と言いながら逃げる気満々で振り返ると、なぜか川に居たやつが這い上がって来ていた。
「三対一なら一」
と叫びながら、川から這い上がり、たぶん今お疲れな奴を思いっきり蹴ってみる。
だが腹を蹴るつもりが、自分の足は思ったより短く、顎をけり上げた。ラノベでよく見るゴブリンのような見た目の奴は、バック転を失敗。そして自爆みたいな感じで、ゴンと音を立てて路面を転がる。
振り返ると、もうすぐ目の前に3匹が来ていて驚き、つい膝が出た。ちょうど真ん中の奴の鼻を強打してのけぞらせる。
そのまま足を振り上げると、また顎に決まった。
よし、両側から水平に振られる棍棒をかがんで避け、ついでに地面に落ちていた棍棒を拾う。そのまま横なぎに振ると、ちょうどさっき棍棒を振りぬいた状態で止まっている奴のわき腹から背中にかけてを叩くことができた。手に妙な感覚が伝わるが無視してもう一匹の頭をぶん殴る。
そこで、またつまらぬ物を切ってしまったと、決めポーズをしようと思ったのに、畜生、2番目の鼻血野郎が起き上がり、殴りかかって来た。
忙しいな、頭に棍棒を振り下ろす。
いやな手ごたえを残して地面にうつぶせに倒れると、黒い煙になって消えて行った…… 良かった。死体が残るとさすがにくるものがあるけれど、消えてくれた。
さすがに息切れがして、つらい…… でもさっき体が温かくなったよな? レベルアップがあるのか?
この残っている結晶は、魔石かな? 一応拾っておこう。
後ろ側で物音がして振り返ると、ずぶ濡れの子猫がいた……。ああ、川で追いかけられていたのはお前か? 手を伸ばしてみるが、逃げないので拾って帰ることにした。首輪をしていないし飼い猫じゃないよな。
スーパーに行くのは一旦保留にして家に帰る。『子猫 餌』で検索すると色々出てきた。さらに調べると、ミルクは牛乳は飲ましてはだめ。必ず猫用を与える事と書かれていた。
あぶねえ、子猫と言えば、牛乳だと思って与える所だった。
やっぱり、買い物に行かなきゃダメか。
「ちょっと留守番してろ」
と猫に言い残し、まずはホームセンターとスーパーだな、道順を考えながら ……どっちにしても荷物は重くなるな。
ホームセンターで、猫のトイレやらバールやら餌やら、手斧やら猫砂やら購入して一度家に帰る ……重い。
猫のトイレや、餌をセットして再び買い物に出る。やっとスーパーに行ける…… まだ商品があればいいけど……。
まだあった、乾物を中心に保存食を購入。なるべくレトルトとパック物、数日分なら大丈夫だろうと冷蔵物で長持ちするものも購入。あっポリタンクがある。少し高いが2個買って前後に背負う。
重い…… 息絶え絶えで帰宅をする。片づけてポリタンクを洗浄してお湯を詰める。
これでしばらく大丈夫だろう。そういや停電すると困るな。ランタンとか買ってくれば…… あの荷物じゃ無理だったな。また買いに出よう。そうだ廊下側の窓にアルミホイルを貼り付けて光が漏れないようにして…… これで良いか。
少し買った生鮮品で ……と言っても独身男性の味方。キャベツと豚肉の炒め物、日によって甘辛だったり、味噌だれだったり、醤油だったり、もやしが追加されたり非常に便利なメニューだ。白ご飯とインスタントの味噌汁を追加して食事をしながら情報を拾ってみると、世の中は意外と普通だった。
モンスターが出たりダンジョンができたりはしているようだが、映画や小説のような危機的状況ではなく、モンスターは特別指定外来種ということで駆除対象として倒せる場合は倒して、無理そうなら行政機関に相談窓口を設置するので連絡をするようにとなっていた。
被害的には、最初に発生した地震の被害の方が大きかったようで、各地で水道管の破裂や古い放置家屋が倒壊。いくつかの火事が発生したようだ。
ニュースで出ていた、[モンスター出現、警官・自衛隊役に立たず壊滅]はどうなったんだよ? ……見直すと小さな[か?]が付いていた……。
なんだよ、せっかくいろいろ準備をしたのに。
とりあえず風呂の水はもういいな。
考え事をしながらボーっとしていると、横から子猫が肉野菜炒めをかすめ取って食べていた。
猫って、そういや雑食だったっけ? ミルクはいらんのか。名前も考えないとな……。
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