第40話 卒業と別れ
ハンズ・バンが起こした失態は、すぐに王国中に知れ渡った。
裏世界との黒い繋がり、大物裏社会のボスの引退。
ハンズ・バンが使っていたB級冒険者の犯罪行為。
全ての行為が明るみに出たハンズ・バンは、冒険者ギルドマスターを首になり、財産の差押えが行われた。
だが、ハンズ・バンの厄災と言われる転落はそれだけで止まることはなかった。
愛人をしていた冒険者ギルドの受付に隠し財産を奪われ、妻や息子からは、離縁状が届き。彼を救う者は誰もいなかった。
貴族ではないということで、家族まで刑を求められることはなかったため家族が罪に問われることはなかった。
しかし、ハンズ・バンは腐っても元A級冒険者として活躍していた男だ。
差し押さえが行われる前にハンズ・バンは逃亡を図った。
スキル、アイテムボックスを持つハンズ・バンは最低限の家財と金貨を持って逃亡したことで王都冒険者ギルド本部によって捜索が行われたが、見つかることなく二日が流れた。
捜索を断念寸前となり、俺は動くことを決意した。
「ギルドハウスでこうやって話をするのは久しぶりだな」
ゴタゴタしたことで、それぞれと会話することはあっても、五人で集まるのは一週間ぶりに王子に会いに行って以来だ。
「先生が忙しかったからでしょ」
「私たちは修行したり、みんなにダンジョン行ったりしてましたしね」
「レベルも30を越えたからな。B級依頼も結構達成出来てるぜ」
「訓練の方も順調に成長できていると思います」
四人が最近の報告をしてくれる。
冒険者として、ほとんど俺から手が離れた四人は自信に満ちあふれた顔をしている。
「君たちは十分に立派になってくれた。ディー、バッツとはどうだ?」
子供たちがケンカをした。
言いたいことを言って、殴り合って……
「僕の力は理解してくれたみたいです。もうケンカはしないって約束してくれました」
「そうか、わだかまりはなくなったんだな」
「はい!」
四人の中で一番最初に出会ったディーは四人の中で兄貴分としてリーダーを立派に務めるまでに成長を遂げた。
「ガロ、もういつでもな家族を迎えに行けるだけの稼ぎはあるようだ。十分に強くなったな」
「おうよ。スラムも暗殺ギルドがつぶれたことで、王国側がテコ入れもしてくれるみたいで住みやすくなるらしいぜ」
「家族を迎えに行くか?」
「う~ん。いつか自分の足では行こうと思ってるけど。そのときは先生の力は借りないでおくよ」
「そうか」
ガロはガロなりの成長を遂げている。
彼は賢い男だ。成長と遂げれば遂げるほど強くなれるだろう。
「リリア、視野は広がったかい?」
「ええ、私は思い込みが強かったみたい。先生のお陰で他の武器を使うようになって自分の視野が狭かったて理解しました。それに世の中の酸いも甘い経験できて、自分の考え方も広くなったと思います」
出会ったときから鋭い視線を持つ子だったけど。
今は穏やかな声で話せるだけの余裕がもてたようだ。
「セシル。君は強い。だけど優しすぎるのが心配だ」
「先生。私は大丈夫です。モンスターも、人も、戦わなければならないことは理解できました」
今、仲間達だけのときは仮面を取り素顔を見せられるようになっている。
「……みんな素晴らしい成長を遂げてくれたことは嬉しく思います」
彼らはこの一ヶ月で一人前の冒険者として認められるだけの功績を出した。
「みんなも分かっていると思うが、今日は君たちと約束した日だ」
四人は俺の顔を見て、しっかりと頷いてくれる。
「君たちを誇りに思うと同時に、今日をもって君たちに卒業を言い渡します」
「出来れば、まだまだ教えてもらいたいことがありました」
「本当だぜ。中級までは押してもらったけど。上級もあるんだろ?」
「そうね。今でもきついけど。これ以上があるなら知りたかったわね」
「でも~キツいのは」
四人は笑顔になる。
「上級とは、私が伝えることではないんだ。
君たち自身が、努力してたどりつける領域だと私は考えているんだ。
ここからは君たちの努力次第だ」
「わかっています。ここからは自分次第」
「そうだな。俺たちもいつも先生におんぶされているだけじゃないぜ」
「そうね。先生の助けになりたいと思っています」
「だから、先生が困っていたら言ってください!」
俺は四人の行為に頷く。
「ああ、ここからは私も好きにさせてもらおうと思っている。
ハンズ・バン。彼は逃亡したそうだ。私は彼を追うよ。
そのため王国を離れることになる。君たちとはお別れだ」
四人は立ち上がる。
「「「「先生、お世話になりました」」」」
四人は揃って頭を下げた。
彼らもこのときのために話を合いをしていたのかもしれない。
「ディー、ガロ、リリア、セシル。一ヶ月間、よくぞ俺の指導に耐え抜いた。
今日をもって四人を冒険者専属家庭教師マナブ・シドーから卒業とする」
「「「「はい!!!ありがとうございました!!!」」」」
改めて、俺は四人に頭を下げ、四人ももう一度頭を下げる。
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