第30話 それぞれの中級課題

ハーフラインとの打ち合わせを終えた次の日。


リベンジャーズは、下準備を終えてジャングルダンジョンへと足を踏み入れていた。


トレントの森よりも高位のモンスターがいるのは当たり前だが、ジャングルには毒を保つ虫系モンスター、サーベルタイガー、ワイルドモンキーなど。

主格となるモンスターが多数存在する。


ランクとしてもジャングルはBランク。

つまり、一流冒険者以上でなければ進入することも許されない領域に入る。



「確実性をとるために同行するが、戦闘や方針は皆で話し合って決めてくれ。俺は基本的に自分のことはするが皆の助けをはしないものと思ってくれ」



今回リベンジャーズが失敗しないと信じたい気持ちはあるが、ハーフラインとの約束もあるため姿を見せて同行することを彼らに告げた。



「なんか、試験の時以来だな先生が居るのって」


「そうね。私は先生とダンジョンに言ったことはメタルなスライム依頼だから新鮮だわ」


「僕もだよ。僕なんか、先生とダンジョンと言えばスライムばかりだったしね」


「私もスライムでした。先生ってスライムが好きなんですか?」



ジャングルに入って降られたため、休息をとっていると会話が弾む


それぞ初級試験で訪れたダンジョンや、今までの訓練内容を話し出してそれぞれが大変な思いをしていたと俺へ愚痴をこぼしている。



「お前達は一人前になりつつあるが、まだまだだ。中級試験を突破して始めて冒険者として認めてやる。それ以上は……まぁそのときになってから話をしよう。そうだ。このジャングルは丁度良い中級訓練に向いているからな。それぞれに課題を出しておこう」


「「「「え~~~!!!」」」」



声をそろえる生徒達は随分と仲良くなったようだ。



「そういうな。お前達をより強くするためにしつようなことだ。ディーには魔力コントロールを言い渡していたな」


「はい。最近はスキルレベル2になりました」


「最低でもレベル5までは熟練させることが大事だ」


「はい」



ディーは真面目で素直なので、今でも毎日訓練を続けている。

このまま続けていけば半年もあればレベル5に到達できるだろう。



「ガロ、初級では知識を増やして、己の技術を磨き、レベルを上げることを課題とていたな」


「ああ」


「シーフの中級編では、己の力で生き残る技術を習得してもらう」


「生き残る技術?」


「そうだ。シーフは仲間が休息している間に一人で偵察に向かうこともある。

その際に毒や罠、モンスターと遭遇など様々な危険を一人で対処しなければならない。どんな時でも一人で生き残るための知識と技術と技量がいるということだ」



俺は一冊の本を取り出す。



「うへ~また本読みかよ。しかも分厚っ!」


「そこにはありとあらゆる毒の知識が記されている。麻痺や石化などの状態異常についても原理が書かれているからな知識として習得しておけ。次に技術だが、すでに罠解除、罠設置、鍵開けを習得していたな?」



「おうよ!」


「それらの熟練を上げて、一つのスキルへと昇華しろ」


「一つのスキル?」


「【盗賊の極意】と言われるスキルだ。それらの熟練度をMAXにあげると統合され器用さが上昇する。ここからは実際にスキルを習得してからだ」


「へ~い」



返事は気のないように感じるが、ガロは興味があるのか分厚い本を開いて読み始めていた。



「リリア」


「はい!」



待ってましたと言わんばかりの気持ちの良い返事に俺は苦笑いを浮かべる。



「初級試験で、洞察力、観察力、心の余裕と言った技量とは別の場所に意識を向けてもらった」


「そうね」


「そこで中級試験では、剣を使うことを禁じる」


「はっ?ハァアアアアアア???意味がわからないのだけど。剣士である私が剣を捨てるの?」


「そうだ。お前は剣に頼り過ぎる。

幼い頃から剣を振り続けていたため、逆にそれ以外が使えないとも言える。

だが、一流の剣士たちは剣を失おうと、また他の武器を使おうと一流の技術を発揮することが出来る。一流への道を歩むならば一度剣を捨てろ」



俺の言葉をリリアは考えるそぶりをして腰から剣を外した。



「わかったわ。何から使えばいいのかしら?」



アイテムボックスを持つ俺に剣を預けたリリアに二つの武器を手渡す。



「いきなり大きな違いのある武器を渡しても難しいだろう。

一つは片手剣だ。レイピアは突くことに特化した武器だが、片手剣は突くだけでなく、斬る、殴る、払うことができるようになる。

それに加えて腰に鞭を渡しておく。中距離の敵を攻撃できて相手への威嚇にも使える」



片手剣と鞭を受け取ったリリアは心許ない様子で、素振りを開始した。



「セシル。君は付与術師としての技量の向上と、ディーと同じく魔法コントロールを覚えてもらうぞ」


「はっはい!」



三人の試験が大変そうだと思ったのか、緊張した様子でドモッてしまう。



「そう緊張するな。覚えてほしい付与魔法は二つ。レジストとバリィだからな」


「レジストとバリィ?」


「そうだ。レジストは魔法防御力を上げる付与魔法だ。グレートモンキーは水の魔法を使ってくるんだ。みんなの命を守るために必要になる。レベルが上がった今なら習得もしやすくなっているはずだ」


「はい!」


みんなを守るためだと聞いて、セシルの瞳に闘志が宿った。



「バリィは自動反射の付与魔法だ。

グレートモンキーは群れで行動するため、集団戦を行わなければならない。

死角から攻撃を受けた時、付与魔法があることで一定時間だけ敵の弱い攻撃であれば反射させることが出来る」



真剣に聞いているセシルに術式とイメージを伝える。



四人は休息時間を利用して修行を開始して、ジャングルの奥地へと進んでいく。



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【sideオーボ】



リベンジャーズとは別のルートからジャングルに入った冒険者パーティーがいた。



B級冒険者であるパンサースナッチの三人組冒険者は、悪態をつきながら進んでいく。



「なんで俺らがこんな面倒な仕事をしないといけないんだ?」


「仕方ねぇだろ。この間、ヤリ損ねた女共の失敗の尻拭いだ」


「けっ、あれは仕方ねぇ状況だっただろ?」


「それでもだ。今の冒険者ギルドを追い出されたら他にいくところがねぇだろ?」


「ハァ~わかったわかった」



三人は悪態をつきながら、現れたモンスターを一撃で倒した。



見た目や素行こそ悪いが、彼らの腕は確かにB級の技量を持っているのだ。





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