第24話 パーティー初級訓練

パーティープレイは色々な面を持つ。


もちろん、一番大事なことは戦闘だ。


個人では出せない力をパーティーならば発揮できる。

それは1+1=2でなく。1+1=10にでも20にでもなるようになってもらいたい。


だが、戦闘はあくまで互いの連携を強めて、強みも弱みも理解しなければならない。



そこで次に大事なこととして、探索時の動きだ。


今回、俺は姿を消して四人の後についていく。



「先頭はセシルさん。ガロは遊撃隊で、先行して探索をしてくれ。リリスさんは最後尾で敵が現れたときに対応してくれ」



隊列を指示するのはディーだ。リーダーを任されてから戦術なども勉強するようになって、少しずつではあるが、責任感や自信を持ちつつある。



「はい。皆さんは私が守ります」



セシルは小回りの利くバックラーを装備して先頭を歩き始める。

背中には大楯も背負ってきているので、重装備になる体力面では心配する必要はなさそうだ。



「了解」



ガロは緊張感なく歩いているように見えるが、シーフの基本として五感を研ぎ澄ませてモンスターが現れる探索を続けている。

さらに、マップの作成、罠の位置確認などシーフに必要な調査の要素も理解しているようだ。



「わかりました」



リリスは、剣は鞘に納めたまま、手を添えるだけで警戒だけを強めている。

どんなときでも臨機応変な対応を取るためには常に武器を構えていてはいけないことを理解しているのだろう。



「よし、まずはこの隊列で探索を開始する。その都度、臨機応変な対応は必要だと思うけど。話し合いながら決めていこう」



回復要因やポーターがいないため、今回はディーが回復アイテムや荷物持ちの役目を負っている。

ここが初級ダンジョンということもあるが、魔法の発動を素早く行うためには荷物は邪魔になるのだが、その点も全員で話し合ったようだ。



今回は初級ダンジョンである、トレンドの森を探索させている。

森型のダンジョンは外ではあるが、背の高い木々によって光が遮られて、道なき道を進まなければならない時がある。

方向を見失いやすく、油断したところに木に擬態したトレンドが襲い掛かってくる。


最初こそ、トレンドが人が近づくと襲ってくるのでわかりやすいが、奥へ進めば進むほど狡猾なトレンドが増えていく。



「兄貴、今日はどこまで進むんだ?」


「先生からは、一日で帰れる範囲と言われている。ガロはどの程度進めると思う?」


「奥までって言いたいが、ここに来るまでは先生が送ってくれたから、街に戻ることまで考えると三時間ってとこだな」



ガロの予想は正しい。


全員に街からダンジョンまでの距離や帰るための道筋などは伝えてある。

トレンドの森から街までの距離は二時間ほど。

探索を始めて一時間が経つので、日没まで帰ろうと思うと三時間ほどが探索に妥当な時間だ。



「そうか、今回は冒険者ギルドからトレンドのドロップアイテムの納品も請け負っているからな。それを優先することにしよう」


「それがいいと思うわ」


「はい!」



ガロの意見を聞いてディーが判断する。

リリスとセシルも賛同したことで、四人はトレンド探索を目標に定めた。



しかし、冒険とは上手くいくことばかりだとは言うわけにはいかない。



最初こそ順調に進んでいた一行だったが、森という触れな環境は体力を奪い。


トレンドという魔物の特性。



「くっ固い!」


「魔法は?」


「炎の魔法は危険だ」


「やぁー!!!」



確かに一定のレベルに達した者達であれば、倒すことは出来る。

しかし、トレンドは意外に固く物理攻撃に強い。

さらに森という地形で炎の魔法を使えば、辺り一面を燃やしてしまう恐れがある。


互いにとって苦手なことが浮き彫りになるということだ。



「ちっ、俺の探検で切り付けても倒しきれないぜ」


「ああ、同じく矢が刺さっても倒すまではいけない」


「バニッシュを使ってはいるんですが、相手が大きすぎて反撃というよりも、押し返すだけになってしまいます」



四人のうち三人の攻撃が通じない。



「私が倒すわ。三人は攪乱と足止めをお願い」



唯一攻撃を通すことが出来るリリスがアタッカーとしての役目を発揮することになる。



それからはリリスが中心となる隊列に切り替わる。



ガロが敵を誘導して、一人ならリリスが攻撃して終わり。

二匹以上の時であれば、セシルが一匹を足止めして、リリスが倒していく。

三匹以上になると、ガロとディーが協力して足止めをするが、なかなか苦戦を強いられることになる。



トレンドのレベルは10程度で格下ではあるが、初級ダンジョンとして相手が強い部類に入る。



「ここまで囲まれて一人に背負わせるわけにはいかない。魔法を使う」



ディーが決断したときにはトレンドの群れに囲まれてしまっていた。


すでにドロップアイテム収集は達成できているが、脱出が困難な状況に追いやられていたのだ。



「セシル。私とガロにアクセルを、ディーさんと自分にブロックをかけて」


「はい」



魔法の準備に入ったディーに代わってリリスが指示を出す。


ガロは動きが早くなったことで手数を増やして、トレンドを相手取り翻弄する。

リリスは動きが早くなったことでタメを作って確実にトレンドを倒していく。


二人がディーを守りながら、ブロックを使ったセシルの下にトレンドを集めていく。



「いくぞ!」



ディーの声で二人が飛び去り、セシルが屈んで大楯の中へ隠れる。



「ファイアーアロー」



同時に5つの炎の矢を放ちトレンドの群れを貫く。


木の性質を持つトレンドに取って、炎は弱点であり、50ほどまで膨れ上がっていたトレンド群を一気に焼き払う。


燃えるトレンドが隣にいるトレンドを燃やして、炎は広がり敵を倒し終えた。



「なんかヤバくないか?」


「逃げるなら今でしょ」


「セシル!逃げろ」


「はい」



燃えながらも動き続けるトレンドたちはもがき苦しみながら同士討ちしていく。



四人は煤まみれになりながら、なんとか逃げだすことに成功した。



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