第3話〜精霊のイタズラ〜
・ゴマくん……レモン
・無頼様……まっちゃ
・兎蛍様……ミカン、少年A
・砂漠様……ゴマじい
・くらげ様……N、謎の光(ティタニア)、少年B
————
レモン「一体何が起きているというのだ! 警察だ、警察を呼ぶのだ!」
ゴマじい「そうじゃ警察ぢゃ! ニャンバラの警察は嫌いぢゃが、こんな状況じゃ仕方ないわ!」
ミカン「け、警察ね。えーっと……」
N「ミカンは5G対応ニャイフォン
ミカン「警察官たちが……次々に行方不明になっていて、現在対応できません、だって」
レモン「何と……これは、由々しき事態だ。ゴマ様! 我々で何が起きているか、調査致しましょう!」
ゴマ「ふぉ、仕方ないのお。マグロを取り戻すためぢゃ」
ミカン「マグロはもう諦めてよ、ゴマ様! それより大事なこと、あるでしょ!」
まっちゃ「たいへんだぁ、一体何が起きてるんだぁ⁉︎」
N「席を立ち上がったゴマたち。と、そこでレモンが異変の瞬間を目撃する」
レモン「……む! また虹色の光……! あれを操っている輩がおる! そりゃ!」
N「レモンは小型ナイフを、天井に向けて投げつけた。次の瞬間、天井から光の玉のようなものがゴマたちの方へ高速で向かってくる。白い光を撒き散らしながら」
謎の光「……もお、危ないじゃーん、乱暴なネコさん!」
レモン「何奴!」
ゴマじい「ほお、こやつは風の精霊ぢゃな?」
N「白い光の玉は、羽の生えた細い体型の女の子の姿に変わった。背中にトンボのような羽が生え、青白い布のようなものをまとっている」
ティタニア「アチシは風の精霊、ティタニア。アチシの魔法〝ワープゲート〟で、色んな物をこの世界と別世界とで行き来させてるのよ。どう? とっても楽しいでしょ、キャハハ!」
レモン「……この不届き者め! そのほうの悪戯にて、迷惑を被っている者が居るのが分からぬか!」
ティタニア「キャハッ! でもやってるのはアチシじゃないわ。ニャンバラの知事ダイカーンとその仲間たちが、ニャンバラの街をもっと面白おかしくしたーい! と言ってたから、アチシが力を貸してるだけ。やってるのはダイカーンとその仲間たちよ。サイズ調整はまだまだ下手っぴだけどね、きゃはっ」
レモン「あのダイカーン殿が⁉︎ まさか! このような悪戯を⁉︎」
ミカン「そんな筈はないよ。嘘言ってもだめだよ!」
N「ダイカーンは、現在のニャンバラの知事の若き黒猫である。もっと明るく楽しい都市にするという方針を掲げ、ニャンバラの住民の多大なる支持と信頼を得ている。そのダイカーンと仲間たちが、ティタニアのワープゲートを使って、ニャンバラと別世界の物を行き来させるイタズラをしているのだという。別世界から来たもののサイズがめちゃくちゃなのは、彼らの魔法が未熟ゆえ、サイズ調整が下手だかららしい」
ティタニア「嘘じゃないわよー。だったらダイカーンに直接聞きに行ってみたら? あ、ほら。あそこに2匹、ダイカーンの仲間がいるわ」
レモン「む、何処だ? しっかりと聞き出してやろうではないか!」
ティタニア「フフ、早く見つけないと、キミたちも異世界送りになるかもね。キャハッ」
N「ティタニアが笑った瞬間、ゴマ一行の周りを虹色の光が包んだ。——花瓶の影で2匹の武装した猫が、ゴマ一行に向けて呪文を唱えていた」
ゴマじい「はぅあ⁉︎ な、何じゃ! 景色が突然変わったぞい!」
レモン「しまった!」
ミカン「わああ、周りが見えない!」
まっちゃ「うわぁ、何が起きたんだぁ〜!」
————
N「虹色のワープゲートに包まれてしまったゴマ一行。ワープで飛ばされた先は……どこかの公園だった。
幸い、ゴマたちのサイズに異変はなかった。猫だけの世界であるニャンバラとは別世界なので、ゴマ一行の着ていた服は消え、みんな四足歩行になり、普通の猫の姿になっていた。
公園では、2人の少年がベンチに座って話していた。片方は茶髪で背が170センチほどある少年、もう1人は肩までの長さがある
少年A「
少年B(
少年A「……優しいんだな」
衣來「そんなんじゃないよ……」
N「2人の少年はしばし沈黙する。その様子を見ていたまっちゃが、少年の方へと飛び出していった」
まっちゃ「ふふふ、優しそうな兄ちゃんたちだ。ちょっと、なでてもらってくる〜」
ミカン「あ、こら、まっちゃ!」
N「少年のひとりは、飛び出していったまっちゃに気づくと、表情を緩ませて両手をまっちゃの方へと差し出した」
少年A「おいで」
N「柔らかな表情で少年が呼びかけると、まっちゃはトンっと少年の膝に乗った」
まっちゃ「レモン、ミカン、君たちもおいでよぉ〜」
ゴマじい「ふぉっふぉ、ほら、ワシはここで待っておるから、お主らも撫でて来てもらったらどうじゃ?」
ミカン「ダメですよ、だってここは……ねえ、レモン」
レモン「……ああ。或いはここは〝物語〟の世界かも知れぬ。であるとしたらば、無闇にこの世界の者と関わらぬがよかろう。既に成り立った物語が書き換えられてしまうと、何らかの代償が生まれるやもしれぬ」
N「果たしてここは、物語の世界なのだろうか。もし物語の世界で、ティタニアたちによるワープゲートの異変が起こったら——。レモンとミカンの脳裏に、不吉な予感がよぎるのだった」
衣來「
少年A(
まっちゃ「はぁー、天国天国ぅ。あんさん、撫でるの上手いなぁ〜」
N「少しの沈黙の後、菰葉という名の少年は引き続きまっちゃを撫でながら再び口を開く」
菰葉「ペテェって、正確には下級だけじゃなくて能力のない生物全てを襲うんだ」
N「菰葉はそう言うと、まっちゃを撫でていた手を止めた」
まっちゃ「……えぇーもう終わりかぃ? ねぇねぇ。……聞こえちゃあいないかぁ。かーえろっと」
N「まっちゃがゴマたちの元へと走ってくるのを、レモンとミカンはヒヤヒヤしながら見守っていた」
菰葉「追いかけられた時、怖かっただろ? ぼくも怖かった。だから、平等に全部護りたい。他の人だったら人間だけしか護らないかもしれないし……ぼくが死んだら、後はお願いね」
まっちゃ「……あのニンゲンたち、何だか不吉な話をしてるみたいだなぁ」
ミカン「よく聞いてたら、ペテェ? とかいう怪物みたいなのがいるみたいだね。もしかして、ティタニアのしわざかな?」
レモン「それは分からぬ。元々この世界に存在する化け物やもしれぬ。何にせよ、奴らの悪戯を阻止せねばならぬのは同じだ……む?」
N「この世界でも、異変は起きていた。レモンの視線の先——そこに、虹色の光がチロチロと蝋燭の火のようにゆらめいており、蟻の行列が光の中へと消えていっている」
レモン「蟻が……」
ゴマじい「10匹、ありがとう、じゃな。ふぉほほほ」
ミカン「ゴマ様は黙ってて!」
レモン「この蟻が別世界で、化け物のような大きさになって現れれば……。大変だ。この世界でも異変は起こっておる。一刻も早くこの騒ぎを止めなければ!」
ミカン「そうだね! ひとまずニャンバラに戻ろうよ。まずはダイカーンさんと話をすべきじゃない? 本当にダイカーンさんがこのイタズラをやってるのか、確かめなきゃ」
レモン「だがどうやって戻るのだ? ……そういえば、ゴマ様。ゴマ様はかつて、ティタニアとやらとはまた別の、ワープゲートを自在に操れる精霊と共に旅をしたとお聞きしましたぞ。その精霊に頼めば、ニャンバラに戻れるのではないか?」
ゴマじい「はて、そんな精霊、おったかのう?」
N「……先が思いやられる旅である。果たしてゴマ一行は、無事にこの騒ぎをおさめられるのだろうか?」
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