※朗読用 老ネコのゴマの〝ニャン生、楽あれば苦あり〟

戸田 猫丸

第1話〜老猫の旅路〜

猫丸……レモン(老ゴマを護衛する若き剣士)

無頼様……ナレーション、若者猫B

兎蛍様……ミカン(老ゴマを護衛する若き魔導士)

砂漠様……ゴマ(年老いたゴマくん)、若者猫A

くらげ様……宿屋の女性猫


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ゴマ「ワシは昔、世界を救った暁闇の勇者だったんじゃぞい! それはまさにここ、ニャンバラの地でワシの伝説は始まったんじゃ……」


若者猫A「あーほら、また始まった」


若者猫B「耄碌もうろくジジイのウソ武勇伝だ。また同じ話聞かされるのかよ。帰ろーぜ」



N「猫たちがまるで人間のように服を着て、二足歩行で暮らす地底国ニャンバラの、とある酒場にて——」



レモン「ゴマ様、マタタビ酒の飲み過ぎですぞ。飲み過ぎは身体に障ります。明日も朝早いのですから、そろそろ宿へ向かいますぞ」


ミカン「あーやれやれ、仕方ないね。レモン、ゴマ様を運んで行くよ」


ゴマ「……それからじゃ、ワシが魔剣ニャインライヴを振りかざすと、海が割れ……って、まだ話の途中じゃぞい! これ、レモンにミカンや! どこへ連れていくのじゃあああ!」



N「脂肪でたるんだ体を引きずられ、酒場から連れ出された老ネコのゴマ。夜道で老ネコを引きずって歩く、2匹の若い猫——レモン、ミカンは同時に、大きなため息をつく」



レモン「ふぅー、少しはご自分の足で歩いて下さいよ……」


ミカン「ふぅー、重いいいい!」


ゴマ「あああ、ワシの酒がああ……」


ミカン「ほら、ゴマ様、もうすぐ宿ですよ」



N「どうにか宿屋に到着。ゴマは観念したらしく、杖をついて立ち上がっていた。曲がった腰がプルプルと震えている」



宿屋の女性猫「いらっしゃいませー。ご予約の3名様でございますね」


ゴマ「おおう、美人さんじゃのう! どうじゃ、この後ワシと一杯やらないかの?」


ミカン「こら! 全くもう……! どこに行ってもこんな調子なんだから!」


ゴマ「ぐわあ、腰を叩くなミカン! もっと年寄りを大切にせい!」


レモン「おほん、大変失礼致しました……。部屋に案内、頼めるだろうか」


宿屋の女性猫「……あ、あはは。お元気な方ですねえ……。では、ご案内いたします」



N「これでも、ゴマはかつては〝暁闇の勇者・ゴマ〟——世界を救った星猫戦隊コスモレンジャーの一員——だったのである……」

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