ダンジョンのゴミアイテム『カード』はカードゲーマーの俺が使えば神アイテムでした!~パーティーを追放された最弱探索者、カードのコンボで成り上がる~
虹元喜多朗
第一章
プロローグ
ギラリと輝く刃が、
『ガアァアアアアァァアアアァァアァァアアアアアア……ッ!!』
Cランクダンジョンのロードモンスター『クリムゾンオーガ』が絶叫する。
いまの一撃が致命傷になったのか、クリムゾンオーガの体がぐらりと揺れ、
ズシン、と地響き。
倒れ伏したクリムゾンオーガは、ドロリと泥のように溶け、地面に吸い込まれるように消滅していった。
辺りが、シン、と静まり返る。
その三秒後、
「――っし!!」
歓声が響くなか、クリムゾンオーガにトドメを刺した、ブラウンの髪を持つ長身中肉の剣士――
大活躍した五十嵐くんのもとに、三人の仲間が駆け寄る。
「ナイスよ、研一。あたしが作った
赤いメッシュが入った、黒のミディアムヘア。自信に溢れたような顔つきをした
「思ったより時間がかかったね。なかなかしぶとい敵だったよ」
金に染めたミディアムストレート。整った顔立ちをした長身細身の魔法使い――
「まあ、倒せたんだしオールオッケーっしょ!」
ピンクに染めたショートヘア。両耳にピアスをじゃらじゃらとつけた、中肉中背の
「あ! あれってドロップアイテムじゃね?」
萩野さんが、つけ爪をした指で広間の中央を示す。
クリムゾンオーガが倒れていた場所には、いつの間にか宝箱が現れていた。
バスタードのメンバーが宝箱を囲み、リーダーの五十嵐くんが
宝箱から出てきたのは、角のような突起が二本ついた、赤い
「『
「防御力に加えて攻撃力も上昇……いい装備品じゃない」
「苦労した
「ほんそれ! これでハズレアイテムだったら
ドロップアイテムの性能を確認して、四人が
ひとしきり喜びを分かち合ってから、赤鬼の紅兜を手にした五十嵐くんが、俺のほうを見やった。
「おい、いつまでそんなとこに突っ立ってんだ、勝地。荷物持ちはお前の仕事だろ。とっとと来い」
さっきまでの笑顔はどこへやら。五十嵐くんの顔には明らかな
「そうよ、勝地。ちゃんと役に立ちなさい」
「勝地くんにはそれくらいしかできることがないしね」
「あんたを守るのは楽じゃないんよー。その分、きっちり働いてもらわんと割に合わないっちゅー話」
ほかの三人も同様に、ぞんざいな言葉を俺に投げる。
俺は奥歯を噛みしめた。
悔しい。
悔しくてたまらない。
それでも言い返せない。
俺はクリムゾンオーガとの戦闘に加わっていないのだから。
五十嵐くんたちに守ってもらわないと、まともにダンジョン探索することもできないのだから。
だから言い返せない。
言い返せない自分が情けなくて仕方ない。
「……わかった」
拳を握りしめて悔しさを押し殺し、俺は駆け足で四人のもとに向かう。
「ほれ」
五十嵐くんが、押しつけるように赤鬼の紅兜を渡してきた。
ズシリと重い兜を左手で受け取り、収納術である『ストレージ』を用いるため、右手で『ウィンドウ』を出現させる。
宙に浮かび上がる長方形のディスプレイ。
『ストレージ』の文字列をタップしようとしていた俺は、自分の『ステータス』を目にして指を止めた。
・勝治真
【ステータス】
HP:65/65
MP:100/100
攻撃力:6
防御力:10
魔法力:22
魔法耐性:18
【スキル】
氷魔法:氷属性の魔法を扱える。
【装備品】
魔法使いのローブ 防御力+1 魔法耐性+5
革のブーツ 防御力+1
思わず
何度見ても、
すべての能力値が底辺レベル。攻撃性能・防御性能ともに
ダンジョン攻略を
これでは、最低ランクのダンジョン――Eランクダンジョンの攻略も不可能だろう。
俺が暗い顔をするなか、赤鬼の紅兜を渡し終えた五十嵐くんが、サッパリした表情で背伸びをした。
「おーし、じゃあ帰るか」
「ダンジョン内のモンスターは全部倒したから、帰りは楽ができるわね」
「そうだね。みんな、お疲れ様」
「つーかさー、打ち上げどうする? いつものカラオケ?」
赤鬼の紅兜をストレージに収納する俺には目もくれず、五十嵐くんたちが
もはや俺には興味ないとばかりに。
俺をいないものとして扱うように。
実際、五十嵐くんたちにとって、俺は取るに足らない存在なのだろう。いてもいなくても同じなのだろう。
五十嵐くんたちの背中を眺めながら、俺は自分の無力を
この世界にダンジョンが出現してから三年が経った。
RPGに出てくるそれとそっくりな
放っておくとモンスターが現実世界側に侵攻してくるため、ダンジョン攻略は人類最大のミッションとなった。
幸いなことに、一五歳を過ぎたひとたちには、モンスターの
こうして、ダンジョンの攻略を行う職業『探索者』が生まれたのだ。
俺もそんな探索者のひとり。ランクは最低のEランク。そしておそらく、俺のランクが上がることはないだろう。
ステータスを伸ばす方法は、ダンジョンで入手できる装備品を用いる以外にないのだから。
俺には、ダンジョン探索で装備品を手に入れるだけの力がないのだから。
俺には、装備品を購入するほどの資金さえないのだから。
ああ……なんて理不尽な話だろう。
俺は一生、最弱ステータスのまま過ごさなければならないのだ。
俺は一生、役立たずとして過ごさなければならないのだ。
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