魔法のノート

「そろそろ飽きてきたな」


魔法のノートを手に入れて、早3年。

俺の欲望は枯渇していた。


ノートに書く。

そんな簡単な作業で全ての願いが叶う人生。

誰もが憧れるものであろうが、

実際にやってみると、意外に早く飽きが来る。


最初は

今日はあれを食べよう、明日はあれを、とか

あれもあれも食べたいから魔法で腹をすかせちゃおうとか、

貪るように魔法を謳歌したが、

この段階まで来ると

『ノートに書く』

という作業さえ面倒になる。


また、折角何でもできるツールがあるのに、

やりたい事が何も思いつかない。

この状態が続くと、何でも叶うくせに意外とストレスがかかる。

わがままなのは分かっているが、これはやってみれば分かる。

なので最近は『自分のやりたい事』を探すための人生を生きている。


今日は2つもやりたい事が見つかった。

1つは『幽体離脱』

もう1つは『テレパシー』だ。

完全に夕方見たオカルト系のテレビの影響である。


「えーとまずは『幽体離脱』だな」

ノートに書く。

いとも簡単に私の魂は肉体を離れた。


(ふーん、なるほどね。はいはい。うーんもういいかな。)

(えーとじゃあ『肉体に戻・・・)


馴れは怖い。

これじゃノートもペンも持てない。

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