ショートショート詰め合わせ（1話完結）

メタバース導入のススメ

ちょうど100年後の2122年。

人々の生活拠点はメタバース内にあるでしょう。

それが当たり前であり、それを疑う者は居なくなります。

メタバースという言葉が流行りモノとして揶揄されている今は『歴史』として扱われるのです！

現在ある『どうしても没入できない問題点』は、全て解決できます。

最初はトイレです。

入院患者のように、管を繋ぐ事で、既に解決可能です。

問題は、多くの方が感情論でノーを突き付ける事です。

「入院患者みたいな感じ？・・なんかやだ。」

と。

次に解決されるのが食事です。

食品用プリンターにより、既に解決可能です。

問題は、多くの方が感情論でノーを突き付ける事です。

「プリンターで作った食事？・・なんかこわい。」

と。

次に・・と、いくつ並べても結果は同じ。

つまりメタバース浸透の壁として立ちはだかるのは全て『感情』なのです。

そういった感情が無ければ、夢のような世界が一瞬にして広がるのです。

そこで、我が社の開発したこの『感情を抑制する薬』です。

必ずやお役に立ちますので、是非導入いただきたく・・いかがでしょうか？

・・・

今年は西暦2122年。

さっきのは100年前の動画だ。

とある製薬会社営業のプレゼン動画で、先日メタバース上の掲示板に公開された。

100年も前の話だし、結局そんな薬は導入されなかったので、世論は何も感じなかったようだ。

私も同じく、何も感じなかった。

ただこの営業の未来予知は当たっていた。

現在、人々の生活拠点はメタバース内にあり、

現状を疑う者は誰もいない。

そういえば、この動画が撮影された時期は、ちょうどIT大手がファーストフードに参入してきた時期と同じだ。

・・だとして何なんだ？

意味のない事を考えるのはやめよう・・。