第98話 三度目の追放(?)

 我々はダンジョンをクリアしてから王都に帰還した。


 十三支部でクエスト完了を報告するとき「遠征クエストを日帰りクリアですかそうですか」と支部長が変な笑いを浮かべていたが、何か問題でもあったのだろうか。

 第一支部で働いてたときは日常茶飯事だったんだがな。


「あの、アーカンソー様っ!」


 そのまま酒場で打ち上げとなったのだが、かしまし三人娘がいきなり頭を下げてきた。


「この度はご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした!」


 迷惑……あの部屋で起きたことだろうか?

 確かに驚いたが、フワルルは

 誰も悪くないと思うのだが……。


「気にするな。大丈夫だ」

「このようなことは二度とないようにします! というか、身の程を弁えてもう同行を願い出たりしません!」

「そうか……」


 や、やはり今回も駄目だったか。

 できるだけ配慮したつもりだったが、さすがにフワルルに麻痺魔法を使うような事態になってしまってはな。


「お互い様ということで水に流すわけにはいかないか?」

「そういうわけにはいきません」

「あー、うん。まあ、そうだよな……」


 あれからウィスリーとシエリは三人娘と一言も口を利いていないし、なんだか気まずい空気が流れている。


 もともと反対されていたし、俺がわがままを通してこんな惨憺さんたんたる結果になってしまったんだ。

 残念だが仕方がない。


「それと例の恋愛に関するご相談については、また日を改めてということでよろしいでしょうか」

「ん? あ、ああ。別に急ぎではないからな。ゆっくり休んでくれ」


 まあ、フワルルに相談できたといえばできたしな。


 ちなみにレダの口から相談の件が出た途端、ウィスリーとシエリから殺気が湧き上がった。


 何故なんだ。

 世の中には不思議なことが多すぎる。


「それでは我々はこれで失礼しますので……」

「そうか。またな」


 かしまし三人娘がすごすごと去っていく。


 フワルルとアーシに至っては一言も喋らなかったし、完全に嫌われてしまったか……?

 この分だと相談を受ける話は流れされるかもな。


「おい」


 ウィスリーが腕組みしたまま三人娘を呼び止める。


「喧嘩ならいつでも買ってやる。いつでもかかって来い」

「……ありがとう、ウィスリー」


 レダが小さくつぶやいた。

 ウィスリーをメスガキ扱いしていたと思ったが、いつの間に名前を呼ぶようになったのだろう?

 冒険の中で絆が芽生えたとか?

 いやしかし、仲は悪いままだったしな……。


「早くどっか行け。しっし」


 ウィスリーに追い払われると、今度こそ三人娘は店から出ていった。

 それなのに、ふたりの殺気が解けてなくないか?


「どうしたんだ? そんなにカッカして……」


 ふたりがジロッと睨みつけてきた。


「ご主人さま巣作りした」

「フワルルと寝たのね?」

「いやいや、レダたちもしてないと証言してくれてただろう?」

「「信用できない」」


 そ、そんな。

 シエリはともかくウィスリーにまで信用してもえないのはガーンだぞ……。


「あんな巣作り女どもの言ったことなんて信用できないもん」


 よ、よかった。

 ウィスリーが信用できないのは俺でなくてレダたちのことか。

 いや、俺の発言も否定してるからやっぱり俺も信じてもらえていないのでは?


「あたしはどっちも信用できない」


 まあ、シエリはそうだろうな。


「どうすれば信じてくれるんだ?」


 ウィスリーとシエリが目を見合わせる。

 頷き合ってから、ふたりが俺をジッと見た。


「巣作りしないでどーやって部屋から出たの?」

「方法を教えて。納得できたら許してあげる」


 ……やはり話さねばならないか。

 まあ、あの空間封鎖にかかった時点でんだよな。


「この話は絶対に秘密だ。口外しないと約束できるか?」


 ふたりを――特にウィスリーを見据えて言う。

 シエリもウィスリーを見る。

 ウィスリーは少し緊張した顔でこくんと頷いた。

 シエリが再び俺を見る。


「いいだろう」


 指を鳴らして結界を張った。

 これで俺たちの会話は誰にも聞かれない。


「俺は師匠に信仰魔法を詠唱することを原則として禁じられている。だから信仰魔法は動作要素指パッチンだけで発動するようにしている」

「でも、ご主人さまがあちしの呪いを解いたときは……」

「あれが数少ない例外なんだ。クラス付与のときもそうだな」

「クラス付与?」


 シエリにウィスリーにクラス付与したときのことを話した。


「そんなことをしてたなんて……無茶苦茶じゃない。でも、信仰魔法が今回の話にどう関係するの?」

「俺が信仰魔法を詠唱しないのは、その内容を神殿関係者に聞かれるわけにはいかないからだ」


 一呼吸置いてから、俺は真実を口にした。


「俺は神々への命令権を持っている」

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