5.スワン島沖海戦

その1

 翌朝、恥ずかしい思いをしながら中々寝付けなかったリ・リラはベットの中で起こされる事になる。


「寝坊してしまったかしら?」

 リ・リラは目を擦りながら体を起こした。


「いえ、殿下、クライセン公爵閣下から至急にご出立のご準備をなさるようにとの事です」

 リーメイはそう言いながらテキパキと荷物を纏めていた。


「何事かあったの?」

 リ・リラはすぐにベットから出た。


 一気に目が覚めたようだった。


「まだ事が起きてはいないのですが、一応警戒の為だそうです」

 リーメイはそう言うと、リ・リラの支度を手伝う為に近寄った。


「一応ではなさそうね」

 リ・リラは不穏な空気を察したようで、着ていたネグリジェを脱いでいた。


 そして、さっさと付けている下着も脱ぎ捨てていた。


「お察しの通りです、殿下」

 リーメイはそう言いながら新しい下着をリ・リラに手渡していった。


 それをぱっぱとリ・リラは身に付いていった。


 王族と言えば、着せて貰うと言った感じだが、リーラン王国では、基本的にはこうやって自分で着替えるのが普通である。


 下着が付け終わると、顔を洗い、リ・リラは床にあった靴を履いた。


 と同時に、ドレスがリーメイから渡された。


 まあ、ドレスと言っても、昨日の儀式みないな華やかなもではなく、シンプルだが、エレガントなものだった。


 リ・リラはそのドレスも難なく、着ると、次は身なりを整える工程(?)だ。


 リ・リラは鏡台の前に座る前に、部屋の扉の前に衝立があるのを確認した。


「エリオ!」

 リ・リラは部屋の外にいるエリオに話し掛けた。


 何故だが、エリオが外にいる事を知っていた。


「殿下、如何なされましたか?」

 やはり、エリオの声が外からした。


「中に入って、状況を説明して。

 ああ、1人で入ってね」

 リ・リラは鏡台の前に座りながらそう言った。


 すると、リーメイは髪の毛の纏めから作業に入った。


「失礼致します、殿下」

 エリオは扉を開けて、中に入ると、すぐに扉を閉めた。


 エリオはエリオで、状況を察しているようだった。


「ごめんなさいね、身支度のついでに説明を聞かせて貰うわ」

 リ・リラは至って普通にそう言った。


「了解しました」

 エリオはそうは言ったが、衝立で見えないリ・リラの事を考えると、ちょっとドキドキした。


 リーメイはリ・リラの豊かな金髪と格闘していた。


 手入れは行き届いている分、ましなのだが、豊かすぎる髪を梳かすのは結構大変だった。


「襲撃でもありそうなの?」

 リ・リラは単刀直入に聞いた。


「いえ、それは今の所、大丈夫のようです」

 エリオは即答した。


「と言う事は、海の上での事ね」

 リ・リラは次の可能性を指摘した。


「仰るとおりですが、まだ戦闘状態には突入はしていません」

 エリオはそう言った。


「と言う事は、あなたの見立てでは確実に起こるって事ね」

 リ・リラはエリオの言いたい事を察した。


 エリオの方は、説明を付け加えようとしていた。


 だが、先に言われてしまったので、所在なさげになってしまった。


「すぐに準備して、港に向かいましょう」

 リ・リラは容赦ないような言い方をしていた。


 まるで、何かを言わせないようにしているようだった。


「あのぉ、殿下……」

 エリオはそれでもその言葉を口にしようとした。


 だが、エリオが言い終わる前に、

「分かっていると思うけど、一応言っておくわね。

 わたくしは残るつもりはありません。

 あなたと共に行きます」

とリ・リラはきっぱりと宣言していた。

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