その6

 夕食後、サラサは自室に戻った。


 夕食時の第3次アラリオン海海戦の話ははっきり言ってショックだった。


 報告書は何度も読んでいた。


(そう言えば、父上から直接聞いたのは初めてだったかも……)

 サラサはベットに寝転んで、天井を見上げながらそう思った。


 あの海戦はオーマにとってもショックだったのか、あまり話したがらなかった。


 とは言え、娘の大事に関わると感じたオーマは、事ここに至って話したという感じだった。


 それだけ、切迫した思いを感じた。


 報告書は、客観的の上に、客観性を重ねたもので、事実だけ書いてあった。


 ある意味、無味乾燥なものであり、実際戦った人達の心情は書かれていなかった。


(それに今思えば、失敗した部分を取り出し、そうならないように対策を取る事に腐心し、教訓としようとしてばかりいたような気がする)

 サラサは大いに反省した。


 しかし、この反省は少しおかしなものでもあった。


 失敗を教訓とする事は何も悪い事ではなく、むしろ、正しい手法の一つだからだ。


(しかし、それではあいつの能力を正当に評価しているとは言えない……)

 サラサは自己嫌悪の感覚に陥っていた。


 報告者から分かるのは、エリオの指揮能力が足りなかったのは明らかだった。


 だから、エリオの事を取るに足りない人物という評価を下していた。


 今日、サラサはエリオを直接見た。


 見た目はその評価以下の人物だった。


 だが、認めたくはないが、そうと断定できる雰囲気ではなかった。


 どちらかと言うと、夕食時に、父親が話していた人物像にピッタリと当てはまった。


「うぁー、認めたくはない……」

 サラサは思わず口に出して、頭を抱えていた。


 更に、手足をバタバタさせて、葛藤に逆らってみた。


 しばらく、そうしている内に意外にも気分がすっきりしてきた。


(うん、認めよう!

 敵を侮って、味方に犠牲を強いるよりはましね)

 サラサはそう決心すると、すぐに眠りに落ちていた。

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