第4話 「黄昏の南大塚🥐」



 捜索期間の契約の2週間で、最終日、その日は土曜日だった。


 今日、探して居なかったら、東雲さんに、また、継続をするか否かを聞かないといけないのである。

 経過だが、ビラは計画通りに、カラープリンターで50枚印刷した。当初のアイデア通り日頃からの友達繋がりを使って、隙間時間だけでもと、出来るだけ多くのボランティアを募った。


 なかなかこの世知辛い世の中、1探偵にボランティアで協力してくれるようなお人好しは普通、居ない。自分達で言うのもおこがましいけれど、そこが僕らの人望なのかもしれない。普段からの関係性だろう。お弁当と飲み物は存分に希望を聞いて用意した。


 桃介は、ホストクラブから、ビールなど酒類を勝手に持ってきては、お酒好きの瞳ちゃんや、ヒカルちゃんにお土産に渡したりしていた。たかちゃんはあまり飲まないけど喜んで貰っていった。


 僕らは楽しみながら交流しながら、猫探しを分担したのである。


 やれる事をやった。手分けして張り紙をしたが、中々に重労働だった。


 一一一しかし、悲しいかな、目撃したような通報の連絡や、手がかりは、全くと言って良いほどに掴めなかった。


 

 東雲宅に戻って来ていないかは、毎日毎日、確認している。また、当初数日は、罠を東雲宅の庭にしかけたが不発だった。違う猫が寄り付いただけである。



 毎日探した。2日に1度は、俺、桃介の他に、たかちゃん、正和君、ヒカルちゃん、瞳ちゃん、石巻さん、柿沼さんのうちの誰かが加わっていた。


 この8人で、猫探しをしている。昼間の猫は、家屋の軒下や影になっている部分で寝ているものだ。



用意した地図を見ながら、各々の自転車で走っては適当に降りて、適当な場所に駐輪して、路地周辺を回る。そんな人海戦術だった。


かなり綿密に、南大塚を、鮭缶を持って探した。「鮭の匂いに嗅覚の鋭い猫は、おびき寄せられるし、チャコちゃんはオスで甘えん坊である」東雲さんの話であるが、なかなかに、結果は出なかった。


 ただ、東雲さんが、アメリカンショートヘアのチャコちゃんと定期的に散歩に行くのは小学校のグラウンドとは聞いていたから定期的にグラウンド周辺を見回っていた。


 この日もグラウンドに行くと数人の少年達がサッカーをしていた。僕は、目の前に居た、水色のTシャツ、ベージュのハーフパンツの少しぼっちゃりした少年に話しかけた。


 「おーい!そこの少年。猫を見なかったかなあ?」


 「すいません。知りません!」


 「いや、謝らなくてもいいよ。オジサンの都合で聞いてんだから」


 「たけし!蹴ろよ」


 「ハジメく〜ん。このオジサンが猫を見ませんでしたかって」


 「あ一、確か、いつもおばあちゃんが猫を連れてきてたけどね一」

 

 「おうおう、ハジメ君、君はおばあちゃんを知っているの?」


 「知ってるー。知らないおばあちゃん。銀色の猫でしょー」


 「そうそう。最近、猫だけ見ないかな?」


 「お〜い。ふたりとも、サッカーやめたの?」奥からヒョロリと背の高いゴールキーパーが、少しだけ苛ついて近づいてきた。


 「いやいや、邪魔してすまないなあ〜、未来のJリーガー諸君。オジサンは猫を探しているんだよね」


 「猫はグラウンドには、来ないけど、俺は猫が集まる場所は、知ってるよ」

 ヒョロリとした少年は、何かやる気なさげに、しかし親切に答える。


 「それは、助かる。なんでも教えてくれんかな」

 「この道の曲がった先の喫茶店の奥かなあ。小さい空き地に、よく猫が集まってるよ、いってみなよ」


 「そっか。ナイス!ありがとう。では、みんなにお礼だ。おじさんがチ○ルチョコをあげよう」


 「ありがとうオジサン。僕、きなこ餅の奴が好きだよ」


 「あ〜。あれな。あれうまいよな。わかった。じゃ次はそれを持ってるようにしようか」

 「でもさ、もう暗くなるから帰ったら?」


 「そ、そうだよなあ。心配ありがとう。君たちもだよ。気を付けてな」


 一一一優しい薄紅色の空がどこまでも広がる。しかし、少しずつ寒々とした曇が集まりだしていた。

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