第71話
そして集まっていた先程の令嬢達も、その言葉を聞いてコソコソと眉を顰めながら話をしている。
しかしアイカは余裕の表情を崩さない。
「勘違いじゃないかしら?わたくしは二人のことを思ってやったつもりだったけど、やり方が間違っていたみたいね……ごめんなさい」
しおらしいアイカの姿を見て、キャロラインは「なんですって!?」と叫んだ。
ベルジェに下ろしてもらうように頼んだ後に、ルビーと共に怒りを露わにするキャロラインを懸命に押さえていた。
それを見兼ねてかリロイが前に出る。
「"ベルジェが好きなのは自分"だとジュリエット嬢の前で、言ったらしいじゃないか。それと、何人かの令嬢にも確認は取れているよ」
「さぁ……身に覚えがないわ」
「君は、何故そんな嘘をついて平然としているのかが分からないよ」
「皆様の気のせいじゃないかしら?わたくしは嘘なんてついていないもの」
「今だって君は彼を騙してジュリエット嬢に仕向けた。再びルビー嬢と仲直り出来ると適当な事を言って連れてきたのだろう?そして令嬢達にベルジェといる所を見せるつもりだった……違う?」
リロイは鋭い眼光でアイカを問いただす。
しかしアイカは知らぬ顔で首を傾げた。
「言い掛かりですわ。わたくしとマルクルス様は何の関係もないわ……あの男が勝手にした事でしょう?」
知らなかった。気付かなかった。言った覚えはない。
謝罪をしたり認めつつも否定してヒラヒラと躱していくアイカ。
やはり決定的な証拠がなければならないと、アイカを追い詰める事が出来ないと、そう思った時だった。
「どういう事だ……?何をッ、何を言っているんだ?」
頭を押さえながら起き上がり、声を上げたのはマルクルスだった。
「マルクルス……君を利用してアイカ嬢はベルジェに近づこうとしていたみたいだよ?」
「なっ……!?」
マルクルスはアイカを見ながら目を見開いている。
「……知らないわ。きっと勘違いしたのね」
「なん、だとッ!?」
「可哀想に……でも、こんな風に執着するなんて惨めね。鏡でご自分の姿を見た方がいいわ」
「ーー!?な……ぼくに、僕に、嘘を吐いたのかッ!?」
「だから、違うと申し上げているでしょう?」
「ジュリエットとヨリを戻せば、ルビー様は許してくれるって……そう言ったじゃないか!!!」
「わたくしはそんな事を言っていないわ。言い掛かりはやめて頂戴」
「なんだと!?」
「あぁ、嘘をついてベルジェとジュリエット嬢を引き裂こうとした。君には元々チャンスはないよ……屋敷で大人しくしていれば良かったのに、利用する為に引き摺り出されたんだよ」
「リロイ様、いい加減な事を言わないで下さいませ。皆様が勘違いしてしまいますわ」
アイカとリロイの応酬は続いていき、リロイが攻めるものの、アイカも上手く理由をつけてははぐらかしていく。
ルビーとマルクルスの言葉に動じないアイカはフッと鼻で笑った後に口を開いた。
「聞き間違いじゃないかしら……?それにわたくしは断定した訳じゃない。可能性の話をしただけたよ」
「ーーーッ」
「そんな性格だから、皆様に愛想を尽かされるのよ……話はよく聞いた方がいいわ?」
「このっ……!!嘘吐きが……ッ僕を騙すなんて許されないぞ!!」
「ふん……」
「ふざけるなっ!ぶっ飛ばしてやる……ッ」
アイカに殴りかかりそうになったマルクルスをモイセスが押さえつけて、他の騎士達と共に引き摺られるようにして部屋から出て行ってしまった。
マルクルスの怒号が部屋に響き、どんどんと遠ざかっていく。
周囲の視線は全てアイカに注がれるが、彼女は先程の態度と一転して、今度は瞳に涙を浮かべている。
恐らく作戦を変更したのだろう。
「わたくしを、犯人にしようだなんて……ひどいわ」
「………」
「こんなの全部、ジュリエットがわたくしを追い詰める為の嘘なのよッ!!」
「アイカ様……貴女は」
「ベルジェ殿下……お願いします!わたくしを助けて下さいませ」
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