第42話
「リロイ……すまない」
「……」
「ジュリエット嬢、キャロラインが申し訳ない」
「陛下もベルジェもキャロラインを少し甘やかし過ぎだよ。このままじゃキャロラインがいつまで経っても変わらない」
「!!」
「あんな言い方をしていたら、周りに誰も居なくなる。実際、キャロラインはいつも一人だ」
リロイの言葉に少なからず驚いていた。
まるでキャロラインの将来を案じているようだと思ったからだ。
「だが、いつもは……」
「いつもはそうだとしても僕や他の人の前では?それで理解されるの?」
「……いや、その通りだ。でもキャロラインは何故かあの態度を止めようとしないのかが分からないんだ」
「以前のキャロラインに戻って欲しいな……」
リロイは少し寂しそうな声と共に立ち上がった。
しかしその場から動こうとはしない。
こんな風に感情を露わにするリロイは珍しいのか、ベルジェもどうすればいいか迷っているようだ。
チラリとベルジェから視線を感じて、ここは空気を読んだ方がいいだろうと二人の元を離れた。
「先に戻りますね」
「……すまない」
後ろを振り向くと、リロイに声を掛けているベルジェの姿があった。
元の場所に戻ると、何故かモイセスとルビーの姿はなかった。
近くに居た侍女に話を聞くと、カップを割って手を切ってしまったルビーを抱えて包帯を取りに向かい、手当てをしているそうだ。
そういえば、モイセスは誰かが怪我をする事を過剰に嫌うような気がした。
そして困惑した侍女達の視線の先……今にも泣き出しそうなキャロラインが肩を震わせている。
『こんな事を言うつもりはなかった』『本当は違うのに……』
そんな歯痒い思いが此方にまで伝わってくるような気がした。
確かに今のキャロラインの言い方では相手に対しての配慮もなく、歯に衣着せぬ物言いと上からの発言は反感を買いやすいものだろう。
ふと、人前でキャロラインが変わる理由が気になったのと、不器用な彼女が本当はどうしたいのか……確かめる為に声を掛けた。
「……キャロライン王女殿下」
「…………ッ」
「一緒に行かないのですか?」
「何よっ!子爵令嬢のくせに、こんな事でわたくしに勝ったつもりになっているなら勘違いしない事ね!」
「…………」
「別にわたくしはッ、わたくしはドレスを買ってもらわなくても沢山持ってるし、それにリロイに選んで貰わなくたって……っ!」
「…………」
「~~~っ!貴女こそ少しリロイに気に入られたからって、調子に乗らないでよね!!お兄様だって、モイセスだって……!どうしてこんな顔が良いだけの貧乏臭い令嬢の所に通って馬鹿みたいッ!!有り得ないわ」
「…………」
「フン!わたくしに声を掛けたら喜ぶと思ったら大間違いなんだからっ、余計な事をしなくてもっ、そんな……別にッ!」
「…………」
「…………っ」
必死に叫ぶキャロラインが気が済むまでと黙って話を聞いていた。
絞り出すように吐き出す声はとても苦しそうに思えた。
「ーーちょっと、何とか言いなさいよ」
その言葉に小さく首を横に振った。
「なっ……!」
「何もありません」
「…………え」
「どうぞ、私の事は好きに言って下さい」
「!!?」
「気が済んだら一緒にドレスを選びに行きましょう」
キャロラインはその言葉にポカンと口を開いたまま固まっている。
その後、肩を震わせて怒りを露わにしている。
「その態度……!このわたくしを馬鹿にしてるのッ!?」
「いいえ」
「……!!」
むしろ「子爵令嬢のくせに」馬鹿にしているのはキャロラインの方ではないだろうかと、突っ込もうとして口を閉じる。
とりあえず言いたいように言わせて、最後まで話を聞いていた。
今までの人間関係で学んできた経験が生きて何よりである。
そしてキャロラインの叫びを聞いて思った事は……。
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