第27話 契約の効果
「えっ?」
『なんだと?』
かえでが了承すると同時に、何かかえでとつながりができた気がする。そして神の声が聞こえてきたってことは、契約が結ばれたんだろうと思うんだけど、一気にレベル4になるってなんなの? っていうか契約の方法がよくわからないんだけど!?
「うふふ、なのねん」
いたずらが成功したかのような笑みをかえでが浮かべている。
「本当は精霊との契約は名前を付けるだけでいいのねん。それをボクたち精霊が認めれば契約が完了するのねん」
「え? でも、あたしが名前をつけたのって結構まえだよね?」
かえでが言うように、名前を付けるのが契約方法だというのであればとっくに私は実行している。それが認められれば……ってことは認めてなかったってこと?
「名前をくれたのは嬉しかったのねん。でも契約者として認めるかどうかは別なのねん」
「なるほど?」
『ほぅ、そういうシステムになっているのか。いきなりレベル4になった理由まではわからんが……、かえでが中位精霊だからというのもあるんだろうか……』
かえでの説明に、キースがブツブツと呟きながら自分の世界へと入っていく。確かにいきなりレベル4っていうのもびっくりだけど、まぁそういうのはキースに考えてもらおう。
あと契約したら下位精霊が常に見えるようになるんだっけか。試しに目に魔力を集めることをやめてみるけど、視界の中の精霊たちは見えたままだ。
「おー、見える見える」
そうしているうちにも下位精霊がどんどんと集まってくる。10センチ前後の小さいサイズが多いけど、数十体も集まってくると自分が埋もれてきそうだ。
いや何体いるのかもうわかんなくなってきたけど、ちょっと、集まりすぎじゃ、ないかな。
「アイリスちゃん、埋まってるのねん」
からかうような声にふと、契約したら言うことを聞いてくれるという言葉を思い出した。
「うぷっ、えーと、みんな、もうちょっと、離れてもらえるかな」
お願いをするとちょっとずつ離れてくれる。
なんとか落ち着けたけど、それでも私を取り巻くように下位精霊が集まっている。
「うーん……、これはこれで目立つんだけど……、普通の人には精霊は見えないんだよね……」
というか精霊たちで向こう側が見えないんだけど……、って、見えるようになったぞ? え? 向こう側を見たいって思っただけなんだけど。
「もしかして、下位精霊はこえに出さなくてもお願い事をきいてくれる?」
「もちろんなのねん。大自然と共にいるボクたちなのねん。契約者も大自然の一部だし、契約していない精霊ともちょっとだけ意思疎通ができるようになるのねん」
「そうなんだ」
うん。確かに精霊たちの「嬉しい」っていう感情が伝わってくる。そして自然の一部というからには、私も自然に過ごせる必要があるのかもしれない。
なんにしろ、これなら普通に過ごせそうだ。
『アイリス』
「なに?」
一安心しているとキースから硬い声で呼びかけられた。
『情報が足りない』
「……なんの?」
胡乱げな視線を向けるがあくまでもキースの真剣な口調は変わらない。
『精霊魔術がレベル4になった理由だ。すぐにわかりそうな情報として、今使える精霊魔術の消費魔力を知りたい』
「あ、うん。まぁいいけど」
「研究熱心なのねん?」
一人の世界から戻ってきたキースを見て、かえでが不思議そうにしている。こういう人間はどこにでもいるものだが、古代文明人もきっと研究バカだったに違いない。
しかし私自身も精霊との契約後に精霊魔術を使ったらどうなるかは興味がある。威力が上がるのか、消費魔力が軽減されるのか、はたまた効果範囲が広がるのか……。
自分のステータスを確認してみると、最大MPが375にまで増えていた。現在のMPは305のままなので、70増えた計算だ。レベルアップ時に、スキルレベルに10を掛けた数値だけ最大MPが増えるのは、精霊魔術も同じみたいだ。
「じゃあとりあえず、これを成長させてみるね」
前に採集した甘酸っぱい木の実の種を鞄から取り出すと、スコップで地面を掘って埋める。優しく土をかぶせると、水筒から水を少し注ぐ。
「どれくらい魔力を注げばいいかな」
屋根を作ったときは何回かに分けて作業をしたけど、そんなに魔力を使った実感はなかった。今回もあのときの一回分でいいかなと決める。
あとは種から芽が出て成長するイメージだ。私と同じくらいの高さで実を付けていたから、それくらいまで伸びるイメージを頭の中に浮かべる。きっと魔力が足りなければ途中で成長が止まるだろう。
「いくよ」
くろすけいるかな? と思うと現れたので、いつものように手伝ってもらうことにする。イメージと共に魔力をかえでに渡すと、その変化は起こった。
地面から緑色の芽が出て双葉を付ける。ぐんぐんと芽が伸びていき、枝が分かれ、葉が茂ってくる。幹も太くなっていき、高さは私の身長を越えた。次第に花が咲いたと思ったら、すぐにしおれてたくさんの緑色の実を連なってつける。実はどんどんと大きくなり、直径が三センチを少し超えたくらいで徐々に赤くなっていく。気が付けば大量に美味しそうな実を付けた木が目の前に誕生していた。
「……これは予想外だね」
「うふふ、おいしそうに育ったのねん」
一つ取って口に入れると、芳醇な香りと甘さが口の中に広がっていく。酸っぱさはかすかに感じるくらいで、ほどよく甘さを引き立てる要因になっている。
そしてステータスを確認すると、MP残量は300になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます