11.普通なのかな? ウチのサークル 

 ポルタをくぐると 同じ街中にある、私たちの夢の国!

 とは、言いすぎかな。

 ポルタをくぐると、学校の列。

 この辺りの山は、あまり高くならずに平に並ぶ。

 そんな山の1つに巻き付くようにならぶのが魔術学園。

 山のふもとにある小等部は木造黒瓦と純和風なつくりで、ノスタルジック。

 そこから登る中等部や高等部は、私たちの学校と違わないコンクリートづくり。

 見るからにモダンとか、ハイテクって感じじゃない。

 それでもベランダは広いし、なんというか、精錬されてる気がする。

 いま私たちがでてきたのは、高等部の玄関外。

 ここにも私たちの学校と同じように大屋根があるよ。

 けど、はるかに立派なの。

 だって、一体感があるデザインだし、作りもしっかりしてる。

 これが、能力者と無能力者の格差という物か……。


 玄関で、持ってきた内履き袋から内履き靴をだして、外履き袋に外履き靴を入れる。

 さあ。目指すは未来文化研究部の部屋!

 笑顔、笑顔!

「お久しぶりで~す」

 そう言って入れば。

「お久しぶり」

「お疲れさまで~す」

「よぅ」

 笑顔と、そんな声が返ってくる。

「昨日の発表、見たよ」

 まず、背の高いグラマスな女性に声をかけられた。

 月島 綾香さん。

 高校2年生のノーマル。

「かっこ良かったよ」

 ありがとうございます。

 太った男の子。

 平 時鳳君も一緒に向かえてくれる。

 彼は魔術学園の、私より1つ下、中等部1年生。

 本当に友達っていいな。

「半日ぶりでーす」

 おや?

「はい、虹色ノート。

 重要なところはフセンしといたから、ちゃんと読まなくちゃダメだよ」

 カラフルな虹色のノートをわたされた。

 色とりどりのフセンが挟まれて、さらにカラフルになっている。

 あ、ありがとう。


 虹色ノートとは、学校が違って全員なかなか集まれない私たちが使う伝統的連絡手段。

 申し送りたい事を書いておくの。

 LINEみたいなケータイの機能もあるけど、手書きの練習にもなるから、今も使われているんだ。


 それはともかく、あれあれ?

「なんで、あんたたち、ここにいるの」

 そこにいたのは、私を小さくして2人ならべたような、双子ちゃん。

 しのぶ&みつき。

 私の小学生の弟と妹がいる。

「あなたのためです」

 みつきが、えらそうに言った。

「小心者のお姉ちゃんが、ハンターキラーの厳しい世界に耐えられるはずがありません」

 ムカムカムカー!

 でも、事実ではあるね。

「でしょ!

 ここはそんなお姉ちゃんの癒しの空間。

 それが問題なの」

 しのぶも、ふんぞり返って言う。

「お姉ちゃんがここで、サボってるんじゃないか、疑惑が発生したの!」 

 それって、えーと、どこの誰が?

「そこはそことして、僕らは考えた。

 そうだ、僕らもシャイニーシャウツに参加すれば良い!」

「そうすれば、ここは佐竹家にとって重要なところだと説得力がつく」

「てなわけでハイ!」

 息つくまもなくまくし立てると、しのぶが、紙の束をさしだした。


 『何が忘れられたのか』第3稿(撮影稿)

          脚本:佐竹 うさぎ


 そう、最初に大きく縦書きしてある。

 そうそう!

 これがないと今日のアフレコが始まらない!

 って・・・・・・。

「これ、私の脚本じゃない!」

 私の名前のとなりに、赤ペンで『みつき&しのぶ校正版』と書いてある。

 めくった。

 うワッ。

 赤い書き込みがビッシリだよ。

 「いやぁ、聡明なきょうだいっすね」

 もう一人の男の子。

 筋金 兼夫君。

 中1のノーマル。

「誤字や脱字の書き直し、全部してくれたっすよ」

 それは校正と言う作業なの。

 助かるよ。

 筋金君はイラストレーター。

 動画『何が忘れられたのか』の実写パート以外は、筋金君のイラストなの。

 ギンギンに尖ったシャープなイラストを描くよ。

「セリフや展開は変えてないよ」

 みつきが、さらにドヤ顔に。

「でも、それホラーでしょ

 お姉ちゃんなら、キラキラ王子さまが好きなんじゃないの?

 たしかに、しのぶの言うとおり。

 でもね、これも私なりに考えた安全保障の一環ですよ。

「え、どういうこと?」

 月島さんが聞いてきた。

 ・・・・・・そう言えば、ちゃんと言ってなかったですね。 

「私たちが戦う怪獣とか怪人って、ほんの20年前までは全然架空の存在じゃないですか。

 だったら、昔から伝わる都市伝説なんかに、真実があるんじゃないかな、と考えたのが書くきっかけです」

 みんな、静かに聴いてくれている。

「でも、そう言うのって、つまりは誰かの創作です。

 どこまで調べても、誰が書いたかわからない噂じゃないですか。

 だったら、自分の経験なり人の直接体験をもとにして、相手がなんでそこにいたのか、ちゃんと向き合いたいんです」

「・・・・・・それで、それは向き合えたのかい?」

 ウワ!

 いきなり後ろから声をかけられた!

「僕だよ」

 振り向けば、魔術女子高生。

 ショートカットにもみ上げ部分だけワキしたまで伸ばしてる。

 未来文化研究部の部長、白 明花、ペク ミンファ部長だ。

 私は答える事にした。

 どうしても、みんなに聞いてほしかった。

「向き合えたか、といわれても、それは、まだわかりません。

 できるのか、やる資格があるのかもわかりません。

 そもそも、私たちハンターの戦略は、この世界に現れた怪獣は一匹残らず狩ることですから」

 そうなんだ。

 他の世界で産まれた命は、この世界とは違う物理法則で生きているんだ。

 自分で調整できないなら、この世界を汚染した後で死んでいく。

 白部長が緊張してる。

「なかなか、ハードな背景だな。 

 さっきの話し方からすると、これは実話かい?」

「ハイ! 前藤総理が官房長官だった頃の体験を参考にしました」

 これは自信をもって言える。

 会議に出席したのも、そう言う話をたくさんもらうためでもあるの。

「それは、意外というか、あの人らしいかな?」

 そうですね。

 我が国の総理大臣は、世界的に有名なフランス人怪盗の、もっと有名な三代目怪盗より自由人かもしれない。

「でも、君には迷いはある。

 その自分からの意見が心の傷になるかもしれない。

 シナリオは書きあげたんだろ?」

「ハイ」

「だったら、君の手腕で大きく化けるかもしれない。

 化けたいなら、着いてきなさい」

 そうだ、今日はアフレコだ。

 この部室には分厚くしきられた部分があり、その向こうはスタジオだ。

 自信を得たいなら、やらないと。

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