あれ(お題「幽暗」)

幼時から、暗がりに惹かれてきた。あれがいるから。輪郭の不明瞭な、白いあれ。人と楽しく話していても美味しいものを食べていても愛を交わしていても万事順調でも、部屋の隅、棚の裏、机の下の暗がりに必ずいる。「見ちゃいけない」亡き祖母の言葉を律儀に守っているが、最近あれは、祖母に似てきた。

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