新婚編~ルーカスside~
新婚編〜ルーカスside~1
ルーカスは疲れ切っていた。
もうそれはそれはげっそりと。
目の下にはもうずっと色濃く残ってしまって消えないクマがあり、纏う空気も重たい。
だが彼は休む訳にはいかなかった。
晴れてアリシアと想いが通じ合い、国民に祝福されながら結婚したルーカス。
結婚する前もしてからも、ずっと可愛らしいアリシアとのラブラブな新婚生活が待っている!――と思いきや。
待っていたのはそれだけではなかった。
いや、勿論新婚生活ももぎ取ったが。
――世代交代。
王太子から王へと。それはルーカスに定められた未来であり、義務でもある。
徐々に慣らしながら執務の内容を重大なものに移行していき、国王の執務内容を完全に引き受け、最終的に戴冠式を経て国王となる。
国王が生前退位をするのは、空白期間をなくし、政治の混乱を防ぐためでもある。
それは勿論理解していたし、本来王太子が婚礼を終え、次期国王と次期王妃が揃ってから始まるはずのこの移行期間は結婚前から既に開始されていた。
なぜならルーカスが結婚を渋って目安の年齢を超えてしまったからなのである。
なので、仕事量の目安や重積についても理解していた。――――いや、正確にはしていると思っていたのだ。なにしろ、
(しんどい…………)
想像以上の重圧と決済量に既にルーカスは限界に近づいていたのだ。
朝早くから夜中まで書類の山に埋もれる生活。
睡眠も食事もまともにとる時間など存在せず、愛するアリシアの姿は、夜中に夫婦の寝室に戻った時にその安らかな寝顔を見ることが叶うだけ。
(こんなことではダメだ…………父上はずっとこの仕事量を……いや、これ以上の量をこなしてらっしゃったのだから。これではまだまだ王となるには未熟だ……もっと精進せねば……。)
時刻はもはや丑三つ時。
ふらふらとした足取りで今日も寝室の扉に手をかけた。
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