第412話
「ドモンさーん!わっ!なんですかあの行列は!もしかしてあれが例の??」
スマートボール場に並ぶ人々は、たくさんの馬車に驚いてはいたが、トッポについては無反応。
街でひょっこり車から天皇陛下が降りてきても、あんな口ぶりで呑気に声をかけている姿を見れば、大抵の人は「そんな訳はないか」となるのと同じ。
ただ問題はその後である。
王族丸出しの服やドレスを着た人達が、あとからあとから馬車から出てきたからだ。
それにより、目の前の格好の良いスーツを着ていた人物が国王陛下だと気が付き、一気にその場の空気が凍りついた。
「え?!お、お父様?!お母様???」
「おおシンシア、ドモン殿に迷惑はかけておらぬか?」
色街の広場でまさかの再会。
その他数名の大臣達もにこやかにその後ろに並ぶ。
向こうの馬車からも、ドモンが知らない王様っぽい雰囲気の人物が数名。そしてまた偉そうなお付きの者達もぞろぞろ。
「な、なんだよトッポ、これは一体??」
「ええ、実は王都のあのホークさんがいた例の店で和平交渉を行ったんですよ。いくつかの隣国の方々も交えて」
「隣国の方々ってお前・・・あれ王様とかだろ。大丈夫なのかよ」
「ドモンさん・・・一応僕も王様なんですよ?アハハ」
そんな会話をしているドモンとトッポの元に、まさにロールプレイングゲームに出てきそうな王様オブ王様の格好をした王様が、お妃様と腕を組みやってきた。
お妃様もドモンよりも随分と年上と思われるが、気品のある素敵なハットとスーツを着用していて、元の世界のどこかの国の有名な女王のよう。
「アンゴルモア王、こちらが例の異世界からやって来られたドモン殿ですかな?」
「ええ、こちらがあのドモンさんです」
「ああ、どもども。そのドモンです」
ドモンは、知らない上に自分に関係のない偉い人はちょっと苦手というか、さほど興味がない。
自分の事を知りもしないくせに偉そうにしてくるからだ。他所の会社の社長などと一緒。奢ってくれれるなら下手に出るけれども。
「いやぁあれは本当に驚きましたぞ!プリンセスローズ!名前もさることながら、あの食感と味はもう信じられないほどの・・・」
「あなたったら、ドモン様がお困りですよ?ホホホ。とにかく美味しかったと伝えたいのですのよ?この人ったら」
ドモンの両手を両手でギュッと握り、一方的に語り続ける王様にドモンは困惑。感動した王様にありがちな行動。
「貴様が作ったそのプリンセスローズや大福はもとより、もち米や小豆といったものまで、交易品として輸出することが決まったのだ」会話に加わる義父。
「え?あんな物が交易品になるのか?美味しいと言ってくれたのは嬉しいけど、ただのお菓子というかおやつだぞ?」ドモンは更に困惑。
新型馬車や自動車、新型の拡声器や醤油や味噌といったものならまだわかるが、アイスクリーム大福が交易品と言われてもピンとこない。
せいぜい輸出品として小金を稼ぐ程度のものとしか思えなかったのだ。
「ワタクシ共の国は砂漠の国ですから、冷たい菓子は貴重なのですよ。それに米も育ちませんから輸入に頼っているのですが、このような菓子になる米など見たことも聞いたこともございません。交易品として十分成り立つのでございますよ」
「へぇ~」
お妃様が丁寧に説明をしてくれたおかげで、何となくドモンも納得。
その流れでうっかりタバコに火をつけ、すぐさま義父のゲンコツが落ちたが、そういう人間だと散々聞かされていたので不敬罪にはならず「ホホホ」「ウフフ」で済んだ。
他にもシンシアの父親だけではなく、ドモンと会話したい者達が次々とやってきた。
「新型馬車についてなのだが」
「こちらが先であろう!馬のいらぬ馬車、自動車とかいうものの話を少し聞かせては貰えぬか?」
「人々が集まるあの店は一体??」
「順番は守ってくだされ!ドモン殿!温泉宿にサウナと呼ばれるものが・・・」
店でトッポが散々自慢したせいで、ドモンは質問攻めに。
まるでここがサミット会場になったよう。
始めは話半分で聞いていたことも、新型馬車に一度乗ればドモンのその凄さがわかる。
アイスクリーム大福をひとつ食べれば、ドモンのその知識の貴重さもわかる。
シンシアの両親からはドモンが作った天ぷらと行進曲の自慢をされ、自分達もその恩恵を受けようと皆必死であった。
そんな騒がしい中、タイミングよくスマートボール場の音楽が軍艦マーチへと切り替わる。
「おお!皆さん聴こえてますかな?これですよこれ。私の娘の婿であるドモン殿が作った行進曲は」とシンシアの父。義父は額に青筋。
「うむ!聴こえますぞ!・・・ん?で、楽団は一体何処に??」キョロキョロした王様オブ王様。
「あれは俺が異世界から持ってきた機械で音を出してるんだよ・・・って、ちょっと待って!あいつ何並んでんだ」
説明したドモンの視線の先には、スマートボール場の列に並ぶトッポの姿と、困惑した顔の大臣と騎士数名とチィとミィ。そして青い顔の客達。
「バカ!お前なにやってんだ!」
「だ、だってあんなに楽しそうなもの、早くやりたいに決まってるじゃないですか」
「いいから来い!このバカ国王!」
「イテテテ!耳を引っ張らないで!イテテ!!」
国王だろうとは思っていたものの、やはりそんな事はあるはずがないと思っていた客達も、ドモンの言葉でそれが本物の国王だったということがわかった。
そしてそんな国王陛下に向かってあんな態度を取り、連れ去っていったことにより、やっぱりドモンが何かしら戦争に関与していたのではないかとまた噂が立つハメに。
「お前は閉店後に決まってるだろ!あとでいくらでもやらせてやるから!」
「やった!!あ、そういえば大きな浴場も完成したのでしょう?それとサウナとやらも」
「チッ!お前あいつらに言いふらしただろそれ。そもそもお忍びで来るって言ってたのはなんなんだよ」
「それはこれからお忍びで行くってことも、その場で言ってしまったからですアハハ。イタッ!!」
とにかくこんな場所で王様達が立ち話をするのも何だからと、全員宿舎の中へ。
突然の訪問客にエミィも困惑していたが、チィ達の姿を見つけあっという間にニコニコ。
「ドモン殿、その銭湯とかいう浴場は?サウナとかなんとかの」
「ああ隣の建物だよ・・・んじゃ、長旅で疲れてるだろうしみんな入ってみる?」面倒だけど、ずっと説明するよりも体験させた方が早いとドモンは判断。
「おお!」「もちろんだ!」「と、とりあえず覗くだけ・・・」「ワタクシは入りますわ!」
「じゃあエミィ、みんなの食事や飲み物は、浴場のとこにある大広間に用意しておいてよ。今日はタレ使っての焼肉でいいや」
「はーい」エミィが手を挙げぴょんぴょんと跳ね、男性陣はニッコリ。スケベに身分は関係なし。
「あとシンシアが女湯の方を案内してやってくれ。サウナの入り方も教えてあげてくれよな。サウナの後の飲み物も用意しとくよ」
「え、ええ・・・」
赤い顔で返事をしたシンシアは、サンと同じような八の字眉をしながらドモンの顔を見ていた。
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