第183話

「よ、酔っていたのよぉ・・・ドモンさん大きな胸が好きだから・・・みんな怒らないであげて」


全員にボコボコにされたドモンの頭を撫でるエリー。

そんなエリーはちょっとだけ誇らしげ。


「あ、あの状況で普通お母さんに飛びつく?ぐぎぎぎ・・あり得ないわ!!」

「奥様の言うとおりです!うーっ!!」

「いたぁぁい!ごめんなさぁい!!」


ナナがまたドモンのお尻をパンパンと叩き、サンが背中をポカポカ殴る。


「あんた!向こうでの悪事、洗いざらい白状してもらうわよ!」

「ま、待て!話せばわかる!ちょっと待っててくれ」


ナナが詰め寄ったところでドモンは馬車の中へ。

これだこれだと何かを取り出し、すぐに戻ってきた。


「ほらこれ」


ドモンはヨハンの頭にリーゼントのかつらをかぶせた。

ウオンに行く前にトンキに寄ってこれを買った。


これぞ一撃必殺。


徐々に笑いが生まれるのではなく、一瞬にしてヨハン以外の全員が『アッハッハ!!苦しいっ!!シヌゥ!!!』と轟沈。

これは流石にナナも耐えるのは無理。


「あとこれ。俺と同じ金髪。双子みたいだろ?」


リーゼントを取って、ヨハンに金髪のかつらをかぶせたドモン。

七つのボールを集めると願いが叶う漫画に出てくるトゲトゲの金髪。


「く、空気を吸わせて・・・お願いだから・・ヒヒヒ・・・」


妻であるエリーも笑いすぎて失神しそう。


「それとこれ。ハゲヅラ」


てっぺんに一本だけ毛が生えたかつらをヨハンにかぶせ、それを脱がせたりかぶせたりを何度も繰り返す。

「生えた!抜けた!生えた!抜けた!」と言いながら・・・。


サンはそれを見て笑いすぎて少しだけおもらしをした。

だが後悔はない。



「あとナナおいで。ちょっと俺の前に座って手を出して」

「な、何よ?」

「いいから手を出して」


ドモンは100円ショップで買ったネイルシールをナナに貼り付けていった。

一本一本貼り付けられる度、ナナが「すごぉい!」と目を丸くする。


「み、みんな見て!!見て!!」

「綺麗です奥様!!サ、サンも!!御主人様!!」


手を高く掲げて自慢をするナナと、それが羨ましくて仕方のないサン。いや女性陣全員。

そんな女性陣を押しのけナナがドモンに抱きついた。

抱きついたナナにネックレスをかける。トンキーで買った安物のシルバーのネックレス。これでトドメ。


「こうして向こうで女達をたぶらかしてたのね!もう!」しかしナナは満面の笑み。

「そんな事ないし、それにナナが一番だよ」

「し、し、し、仕方ない人ね!!フゥフゥフゥ!!」


ナナを抱きしめながら、誤魔化しきってドモンはシメシメの表情。

あとはトンキで揃えたスケベグッズで仕上げれば完璧と考えていた。



「はい、ドモンの服と財布といつもの機械。財布とポケットの中に浮気の証拠をたくさん見つけたけどね!」

「浮気というか故郷で体を癒やしていたというか。まあ故郷はすすきのなんだけど・・・」ボソボソと小声で誤魔化しつつ、素知らぬ顔で着替えるドモン。


「ケーコさんとは?」

「あいつに看病してもらってた。はじめは口も開かないし動けないしで、助けてもらうしかなかったんだよ」

「それはわかるわ。で、ケーコさんとは?」

「・・・・向こうの温泉に連れて行かれて、その~、でも俺は動けなかったんだぞ?本当に。ケーコが何度も襲ってきたんだよ」

「ハァ・・・まあケーコさんなら仕方ないわね」


相手があのケーコなだけにナナも今回ばかりは白旗。

実は何度かナナの夢にもケーコが現れ、「こっちに来なさいナナ。何をやっているの?仕方ないわね」といった調子で、夢の中で怒られたりもしていた。


「この機械のつけ方がわからなかったのよね。もっと浮気の証拠が出てくるかと思ったんだけど!」


ナナがスマホを持って上から下から覗き込む。


「い、いいから返せ!壊れるからほら!」と焦るドモンにジトっとした目で睨むナナ。

「これならば恐らくここを押すのだ。以前ドモンが店でそうしておるのを見たからな」とカールがスマホを手に取り電源を入れる。

「あ!触るな!あ!あ!」ドモンは大慌て。



ロック解除画面に現れたエリーのフルヌード。約十秒後、ロック解除されなかったスマホの画面がふわっと消えた。

ただそばにいた人々がそれを確認するには十分すぎる時間であった。


結局は元の木阿弥。土下座をして謝るドモン。

そして今度はエリーやヨハンも味方をしてくれない。当然である。


どうせ自分しか見ないし、帰宅するまでには変えようと思っていたのだ。

良いものが見られたと浮かれすぎた結果。

ドモンは一体何度同じ過ちを繰り返すのか?


「いい加減あんたには呆れたわ」蔑んだ目でドモンを見下ろすナナ。

「私も流石にこれはちょっと・・・」汚らしいものを見るような目になってしまうサン。

「本当よぉ!それにドモンさんだけじゃなくみんなにも見られてしまったじゃないのよぉ!」涙するエリー。


全員がジトっとした目でドモンを睨む。


夢ならすぐに醒めて欲しい状況だが、悲惨なことに現実である。

死から復活し歓迎ムードだったはずなのに、自業自得スケベ男の末路は悲しい。



「こ、これからは心を入れ替え、真面目に働いて真面目に生きます・・・」

「誰一人それを信用する人なんていないと思うわよ?」

「お願いします!信じてください!実はここの温泉の設計も向こうで考えていました。向こうの温泉に行った時に」

「・・・・」


ドモン被告を囲む裁判員達がヒソヒソとなにやら相談した結果・・・


「有罪!懲役100年!」ナナがキッと睨む。

「うわっ!酷いじゃないかよ!」

「ただし執行猶予は50年だ」とカール。

「だからこれからは真面目に暮らせドモン。何でもかんでも許されると思うな」とグラも諭した。


ぐったりとうなだれたドモンを見て、ようやく場の空気が和んでいく。

きっとこれでドモンも生まれ変わるだろう。


ゴブリンの村の中へ馬車が入り、一同も村の中へ。

カールも初めて温泉を見て感嘆していた頃、ドモンは逃げた。




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