魔女の隠れ家
青蓮華
プロローグ
魔女の隠れ家
「ねぇ、魔女の隠れ家って知ってる?」
ある福祉施設の昼休み、食後の一服を楽しんでいた
彼女は千夏の周りでは出世頭だが、オカルト好きが災いし、利用者から嫌われていた。
「またそれ?
こないだケアマネに言われたじゃん、特養でお化けなんて縁起悪いって」
「言われたから、宮松さんに話してんの。
そっち系、嫌いじゃないでしょ?」
好きでもないんだけどなぁと思いながら、千夏は溜め息を吐く。
『こうなったら止まんないか………。
仕方ない』
彼女のモットーは1に保身、2に保身、3、4がなくて、5に保身である。
長い物には巻かれるタイプだ。
「で、何それ?
新しいアニメ?」
「違う、違う、カフェだよ。
ハーブティー専門の」
「ふぅん、珍しいね」
「でしょ?
もっと珍しいのは、この店には二つ顔があるんだって」
「はっ?」
「昼は普通のカフェだけど、夜は呪いとか、
『うわっ、お決まりパターン』
千夏の眉が曇る。
霊感商法の典型に見えるが、気のせいだろうか?
「それ、ヤバイんじゃないの?」
「ヤバそうだったら、帰ればいいじゃん。
二人で行ったら大丈夫」
『二人……、私じゃない事を祈りたいけど、私なんだろうなぁ』
そこは諦めている。
諦めているが、溜め息は止まらない。
「明日休みでしょ?」
『休みでしょって、予定があったらどうするんだか』
幸か不幸か、千夏にとっては間違いなく不幸だが、明日の予定はない。
「分かった、分かった。
何時?」
「十時でどう?
軽食もあるみたいだし、遅い朝ご飯って感じで」
「了解」
こうして、二人の明日の予定が決まった。
それが友人として過ごす最後の時間だとは、夢にも思わず。
翌日の朝、いつもよりゆったりと起き、ゆっくりと身支度をし、ノソノソと玄関に向かう千夏。
その背中にはダルい、面倒い、寒いという言葉がデカデカと乗っかっている。
『眠い………。
てか、何で休みに早起きしてんだ?』
白い息を吐きながらドアを開けると、千夏の目に一台の小型車が映る。
太陽光を浴び、黒黒と輝くフィット、今はそのエンジン音まで耳障りだ。
坊主憎けりゃ何とやらである。
優花の愛車であり、十年以上は乗ってるんじゃない?と苑内で噂になっていた。
運転席から手を振る彼女に手を上げて応え、助手席に滑り込む千夏。
「おはよう」
「おはよう。
シートベルト届く?」
「大丈夫」
千夏は左肩の後ろに手を回し、次いでシートベルトを締めた。
それを確認し、カーナビを動かす優花。
「二十分くらいで付くから」
「了解」
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