魔法師団秘蔵写真集!? 2

 フェリシアもミランも驚いた。

 本物の写真が使われていたからだ。抽選で選ばれた貴族(ほとんど女性)限定パフォーマンス写真や、お茶会の写真もある。

 その中に、団員の着替え写真や、シャワー中写真があった。

 フェリシアの心臓は跳ね上がった。


 いつ撮られていたの? こんな写真。これじゃあ私のも? もしかして、私が女だってこと、この人たちにはすでにバレているの?


「落ち着いてフェリシア。これは違う。本物の中に偽物が混ざっているんだ」


 気を取り直したミランがフェリシアに耳打ちした。

 フェリシアははっとして、写真集をよく見た。そのとおりだった。着替え写真やシャワー写真は本物の団員じゃない……そっくりさんだ。

 普段団員たちの近くにいるフェリシアだから分かる。だけど、配信映像や、遠目に団員を見ることしかない一般の人にはきっと分からない。髪やシャワーの湯気、カメラアングルで実に上手く誤魔化している。

 次のページをめくり、フェリシアは絶句した。代わりに、フェリシアとミランの後ろから写真集(見本)を覗き込んでいた女性たちから黄色い声が上がる。


「きゃー! フェリクス様のシャワー写真よ!」


「貴重だわ~。フェリクス様って、どんなに飛び回っても決して制服を脱がないから」


「厚い胸板が素敵! 着やせするタイプなのね、私、買うわ!」


「私も!」


 言葉通り、フェリクス・ブライトナーのシャワー写真であった。

 いや、フェリクスのではなく、フェリクスのそっくりさんである男性のシャワー写真。フェリシアからしたら、誰? って感じである。


 写真集が本物だと思い込んだ女性たちは、こぞって買い求めはじめた。

 フェリシアとミランは女性たちに押しつぶされないよう、そっとその場を離れる。


「偽物決定ですね。だけど、王宮内で行われたパフォーマンスやお茶会の写真は本物です。抽選で選ばれた貴族しか入れないはずなのに、どうしてなのか……聞いてますか、ミラン殿下」


 フェリシアが小声でミランに問うと、ミランは真剣な顔をして言った。


「そうだね、偽物だ。胸の大きさはあきらかに写真集の方が上……いたたたた、いたい、いたいって!」


「ミラン殿下のほっぺは本当によく伸びますね」


「ごめんってば。機嫌を直せよフェリシア。ほっぺをつねるのやめて……」


 ミランがそう言ったとき、王宮の警察機関が駆けつけた。

 売り手の男性と女性は速やかに捕らえられ、連行されていく。


 残された魔法師団ファンの女性たちは、写真集が手に入らず、騙されたと知って、不満そうだ。


 と、そこに――。


「魔法師団、参上! 傷ついた女性たちはどこかな!?」


 颯爽と魔法師団が浮遊魔法で現われた!


 まさか魔法師団がやって来るとは思わなかったので、フェリシアもミランも驚きを隠せない。

 団員たちは格好つけながらくるくる空中をまわり、魔法の花を飛ばした。騙されてご機嫌ナナメの女性たちを癒すパフォーマンスだ。

 きっとリステアードの指示で、王宮に待機している団員たちが出動したのだろう、とフェリシアは思う。

 しかし、団長不在なので、皆スタンドプレーが目立ち、いまいちまとまっていない。

 女性たちは本物の魔法師団を間近で見られた嬉しさで、パフォーマンスの粗など気にしていないようだったので、とりあえずフェリシアは安堵した。

 そんなフェリシアに団員の一人が気がついた。


「あ、フェリクス団長ー! そんなとこで何やってるんですか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る