第8話 沖田さんを好きな理由

空を見てみると、いつの間にか日暮れどきだった。私は溜息をつきながら空を見上げた。夕日の空に星が薄く輝く中、近藤さんの事が頭に出てきた。まさかこんな事になるなんて……沖田さんルートを自分で作りだすため、「雷鳴」本来は存在しない沖田さんの隊に入隊した。普通はここでルートが確定しているはずなのだ。本来の「雷鳴」は、ルート確立時に攻略対象者の誰かの妓生になる。または新選組外に行くため、タイムスリップした時点でまず新選組に見つからないように逃げるしかない。どのルートのどれにも入ってないはずだ。しかし、何故か近藤さんルートにしかないスチルと同じフォルムと、セリフ……間違いなく近藤さんルートに入ってしまったんだと思う。私としては近藤さんではなく沖田さんがすきだ……好きなのだ……だから否定したいのに、否定しようとすれば沖田さんの好感が下がる。どうすれば良いのか……頭の中でじっと考えていると、後ろから山崎さんが近づいてきた。


「……寺本様。 もう夜が来ます。どうぞ中へ」


 私は思わず山崎さんに向かって眉間に皺を寄せて冷たい声色で声をかけてしまった。


「気にしていません。 私は今大切なことを考えているので、ほっておいてください」


 良い歳にもなって、こんな風に誰かをあしらうなんて子どものようだ。体の影響だろう。よくこんなことを聞いた事がある。元々の世界では成人していても、転生後の世界で体が子どもになっていて、考え方も幼くなってしまうと。山崎さんは怯まずに私の断りを跳ね除けた。


「ダメです。貴方は隊士達に正体がバレてはいけない身。 あなたもわかっているでしょう?」


 私は山崎さんのまっすぐな目を見て我にかえった。何を人にやつあたりしているのだろう……山崎さんは私を思い、注意をしてくれているのに。私は静かにため息をついた後、山崎さんに笑みを向けて話しかけた。

  

「少し私の話を聞いてくれませんか? 」


 私が自室に呼び込むと、山崎さんは頭を深く下げ、頷いた。部屋には畳だけが広がっており、机と座布団だけが敷かれている。私は座布団をもう一つ押し入れから取り出し、山崎さんのお膝元に置いた。向かい合い座り合うと、山崎さんから一言溢れた。


「どうして君は壬生浪士組に? 」


 私はその言葉を聞くと、手を組んで口を開いた。


「私ね、信じてもらえないかもしれないんだけど、未来(前世)で歴史が大好きだったんです」


 私は前世の自分が「雷鳴」をプレイしていた頃の記憶をたどった。



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼前世✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


 京都の城陽市富野荘。ここは何もないただの田舎。大きな病院も車で10分はかかるし、近くの大きなスーパーだって、足で行くのには遠くて自転車で20分かかる時もあった。私はこの街の木津川近くのマンションに住んでいるOLだった。昔巷で有名だったジョンプの漫画が好きであった。その漫画は幕末を舞台にしており、偉人のあり得ないコメディや笑って泣け人情話を読んで、心の空いた人生に穴を埋めていた。いつの間にかその漫画に出てくる偉人の話が気になって、幕末の英雄にのめり込むになった。そんな私がずっと気になっていたのが、沖田総司だった。


「……沖田さん……! 」


 実際の顔写真はないにせよ、ウィックーでみた彼の生き様や、書物に書いてある彼の人生にどこか惹かれていってしまった。すぐに私は沖田さんが「推し」になった。私は彼が出たメディアのものを追っかける様になった。沖田さんが乗っているゲーム。イラスト。彼の人生と、その生き様を最後まで知りたい。そして彼の生きた人生を少しでも知りたいと思った。多分それは一種の「恋」に等しい思いだったのだろう。ひたむきに彼を思い、彼の死に自分のように心を痛めていた。「雷鳴」に出会ったのもそれがきっかけだった。沖田さんを知りたくて、知りたくて私はこのゲームをプレイした……しかし攻略対象でないこと。恋仲になれないことでやるせなさが込み上げた。



「どうして……私なら」




#沖田さんを幸せに出来るのに……!__・__#



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「そんなことがあって…… 」



上記を述べると、真剣な顔で聞いている山崎さんが目の前にいた。私は思わず恥ずかしくて、顔を隠した。



「ごめんなさい……!私ったら恥ずかしい事を……」


山崎さんは恥ずかしがる私を見て首を横に振った。


「あなたは純粋で真っ直ぐな人だと僕は思います……人を人とも思わない……「人斬りの道具」としてしかご自分を見ていない沖田さんには、貴方のような方がいてくれることは心が変わる引き金となると思うので」


変わる引き金……そう言ってくれるだけで心が安らいだ。この変わらなさそうな現状に、私は絶望していたのに……この人はこんなにも優しい言葉をかけてくれる。


「どうして山崎さんは私にそんなに優しい言葉をかけてくれるんですか?」


私が問いかけると、山崎さんは頬を緩ませた。


「僕は……」


その時、襖がひらき、近藤さんが部屋へと入ってきた。


「たけちゃん!今から星を見に行かんか?」


近藤さんのの優しい笑みが、彼との差を大きく開いていく。私は拒否をしようとすると、沖田さんが後ろから援護してきた。



「近藤さんが星を見たいって言ってるんだよ。 局長の援護をするのも、隊士の役目だからね」



沖田さんの笑みには、圧力がかかっていた。私はどうする事も出来ず、そのまま近藤さんと共に夜の星空を見に行くこととなった。

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save point


好感度メーター


近藤→45%

土方→5%

齋藤→45%

永倉→20%

原田→2%

井上→12%

谷 →0%

尾形→??

?→0%

?→0%

?→0%

(Secret)→45%


root→近藤勇


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