第22話 計画と実行

 お姉ちゃんの行動は早かった。

すぐに夫に会わせるように言われ、その日の夜に私達は息子を姑に預け、家の近くのファミリーレストランで待ち合わせた。

 お姉ちゃんは自分の夫も連れて来た。

久しぶりに会う "お兄さん"

昔、いつ行っても嫌な顔ひとつせず受け入れてくれた、痩せた背の高いお姉ちゃんの旦那さんだ。

 そして、四人で二時間近くファミリーレストランで話し合った。


「謝ることが嫌なんじゃないんです。ただ、今回もし謝ったら、今後向こうの出方が今以上に強くなる気がしてならないんです。"怒れば言うことを聞く"、みたいな。そしたら自分達の生活や方向性が全部支配されるというか、監視下に置かれるような気がするんです」


夫が自分の心情を訴えた。

お姉ちゃん夫婦はすぐにそれを理解し、夫に

「間違ってないから大丈夫」

だと言ってくれた。


 そして、お互いの都合の良い近々の夜に作戦決行を決めた。


「仲介してくれる人物に当たるように言った時、何故お姉ちゃんに連絡しなかったんだ?」

と、夫に言われたが、過去が過去だけに母親がお姉ちゃんの話などまず聞かないと思ったし、お姉ちゃんも私の母親になど会いたくないはずだと考えた。

それに、お姉ちゃんと距離が離れたことで親を通して私を見た場合、私への気持ちが変わっていないとは信じられなかった。

いや、嫌な顔をされるんじゃないかと怖かった。

今となれば言い訳にしかならないが...


 お姉ちゃんとお兄さんの作戦は【女抜き】であった。(お姉ちゃんは別)

「女は感情的になって話が進まない」

それが理由だそうだ。これはきっと私の母親を指している。

母親は従うだろうか...


 数日後の夜、いよいよ作戦は決行された。


 お姉ちゃんとお兄さんは私の実家へ向かった。

まず、父親と母親を引き離さなければならない。

二人は私の両親を説き伏せ、父親一人を一家の代表として話し合いの場に連れていくことを了承させた。


 その後すぐに、私達はお姉ちゃんから父親連れ出し成功の連絡をもらい、夫が一人出発した。

行き先は車で45分程かかるお姉ちゃん宅。

【女抜き作戦】で自宅に残った私は、祈りながら夫の帰宅を待った。


 今日は長い長い夜になる。


 どれだけの時間が経っただろう。

息子も姑も寝静まり、時計の針だけが進む。

どうなっているのだろう。

大丈夫だろうか。

夫は無事だろうか。


 深夜になり、随分時間が経ってから夫が帰ってきた。

夫は出迎えた私の前を素通りし、二階の私達の部屋へ真っ直ぐ上っていった。

私は緊張しながら後ろを急いでついて行った。


 絨毯の上にあぐらをかいて座って、大きく息を吐く夫の傍に、私はちょこんと正座して夫の言葉を待った。


「とりあえず、まとまったから」


夫から出た第一声であった。













 

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