第2話 動かない世界
この国では代々王位を女性が継いできた。
何故かこの国では
王位継承権を持つ持つ男児が早逝しており
幾度と無く二人の姉妹で
王位が争われて来たのだ。
王位継承の条件は
①他の継承者の継承権放棄
②継承者の逝去
とされている。
不思議な事に今までの歴史上
王位を継承してきたのは全て妹であり
姉に関する記録は全て二十歳代で途絶えていた。
記録が途絶える事
それが意味するのは『死』だという事も
幼い頃から理解させられていた。
先日、十八回目の誕生日を祝われた私は
八歳上の異母姉に想いを馳せていた。
「私は…どうなるのかしら」
口から零れた言葉は
傍に立つ家庭教師の耳にも
届いてしまったようで
怪訝そうに目を細める。
そして
「アモル様
貴女は『継承者』なのですから
その様な発言は控えて頂きたいものですね」
と冷たく言い放つ。
『継承者』
それは現皇帝が
次期皇帝に最も相応しいと思う者に贈る称号。
(私には姉上程の知力も武力も
何も勝る物なんて無いのに…。)
皇帝とは民に愛され国を治め
民を敬い国を護るもの。
その為に誰よりも賢く
誰よりも強く無くてはならない。
その条件を満たせるのは私では無く
私の異母姉なのだ。
蓋世不抜の才能を持つ彼女であれば
皇帝となりこの国を護る事が出来るだろう。
(母上は姉様を
あまり好んではいないようだけど…。)
「アモル様。
そろそろ本日の授業は終了とさせて頂きますが
質問等はありませんか?」
家庭教師と視線が合う。
無機質な
ただ教科書通りの答えしか
くれないであろう感情の無い瞳と。
何故、母上は私を『継承者』にしたのか。
何故母上は姉上を嫌うのか。
私にだけ家庭教師がいるのは
私が落ちこぼれだから?
母上の期待に応えられない娘だから?
質問ならばいくらでもある。
けれどこの問いの答えは教科書にはない。
だからきっと
この人は答えてはくれないだろう。
母上の意図など知りもしないのだから。
だから私はいつも決まって
「いえ、大丈夫です。」
と答える。
「そうですか、では私は失礼します。」
そう言って退室する家庭教師に
一声も掛けれないまま
私は扉が閉まるのを見つめていた。
(こんな私が皇帝になど…なれるはずがない。)
きっと姉上ならば
もっと上手く家庭教師た会話をして
より多くの事を学び吸収して
皇帝になるべく成長していくのでしょう。
……いえ、姉上ならば
そもそも家庭教師など不要。
あの人は誰に学ばなくても全てを理解し
全ての答えを持っている。
そういう人だ。
「そういえば…」
私はふと思い出した。
幼い頃に一度だけ
姉上は私の質問に答えてくれない事があった。
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