第十四話:まるぐりっとさんのお祭り①

 どうも、ごきげんよう。ガチロリの餌食令嬢マルグリットです。

 

 とんでもなく色んな意味でヤバイ護衛が出てきて肝を冷やしましたが、本人に釘は刺したのでしばらくは大丈夫でしょう、多分。

 

 それに前回の暴露時の発言内容からナナに手を出すようなことはしないとは思うのだけど、念の為にもう少し監視の目は必要ね。

 

 何かの書籍で読んだけどこの手の輩は大抵『Yes、ロリータ No、タッチ』って言うらしいけど、ヘンリエッタを見ていると、どうにも嘘臭い用語にしか聞こえなくなるわ。

 

 馬車に乗る時にもちろんあの時の事は思い出すんだけど、トラウマの様な事はなく至って心は平穏。人間慣れって怖いわね、本当に。

 

 それにしても眠い…… 朝から準備が必要ってナナに叩き起こされたからだわ。ガルカダまで少し寝ちゃいましょう。

 


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



『ハァハァ、ハァハァ』


 うるさっ、せっかく人が気持ちよく寝てるところに変な音立ててんのよっ。

 

『ハァハァ、ハァハァ』


 ん? この音…… 絶望的に嫌な予感がした私は目を閉じたままつい先ほどあった出来事を掘り起こすべく脳みそを緊急WAKE UPさせていた。

 

 ポクポクポク…… チーン。

 

 間違いないわね。あいつ、注意した直後に早速やらかすとかどんだけ欲望に忠実な鳥頭なのかしら。いえ、速攻で発情しないだけまだ鳥の方がまだマシだわ。

 

 私は実態を調査するべく薄目を開けてヘンリエッタの動向を確認することにした。

 

 私とナナを交互に見ながら息を荒くしてるわね。一度で二度美味しいが経験できているためか、馬車に乗る前は隠せていた表情が今は全く隠せていない。

 

 口元!口元がだらしなさすぎる。ちょっ、ヨダレ、ヨダレが落ちそう。わ、わたしにかかっちゃう。

 

 ナ、ナナはどうしてるの? 私は薄目のまま目線をナナが座っていたはずの場所に向けてみた。

 

 ナナは鼻歌を歌いながら馬車で外を眺めている。か、可愛いすぎか?

 

 これ以上、ヘンリエッタの暴挙を見過ごすわけにはいかない。ナナが汚される前に私は今ようやく起きるふりをしてわざと声を出すことにした。

 

「う、う~ん」


 ヘンリエッタは私の声に驚いたのか『ビクッ』と身体を震わせて口元を腕で拭っていた。

 

 おい、騎士とはいえ淑女なんだからハンカチ使え! そういう時だけおっさんみたいな挙動するな。

 

 ナナは私が起きたと思ったのかこちらを振り向いてニコニコしている。守りたい、この笑顔。


「あー、ちょっと寝ちゃったわね。今どの辺りかしら?」


 私はわざとらしく起きたフリをするが、二人とも全く気に留めていない。どうも、演技派令嬢マルグリットです。


「ちょうどいいタイミングで起きられましたね。まもなく目的地に着きますよ」


「お祭りの雰囲気を味わうためにも馬車は預けていきましょう」


「マルグリット様、今日は人も多いため、歩かれるのは危険です」


「あら、その危険を排除する為にあなたがいるのではなくて? 難しい要求をしているつもりはないわ。あなたの護衛としての実力を見せて頂戴」


「はっ、かしこまりました」


 案外チョロイわね。もう少し食いついてくるかと思ったけど、この辺りは新人臭さがある感じね。

 

「メインストリートである大通りに行ってみましょうか。そこに出店が沢山出ていると思うわ」


 私たちは大通りに着くと所狭しと立ち並ぶ出店の数と大勢の参加客に圧倒されていた。


 露店の大きさは店舗によって大小様々で食品販売からアクセサリーだったり魔道具など多種多様という感じだ。

 

 私の目的はもちろん『買い食い』よ! そう、育ち盛り(?)なんだから色んなものを食べて大きく(?)ならないとねっ

 

「そうね、手始めに…… あのお肉の串美味しそうね。あれなんてどうかしら?」


「私はお嬢様の食べたいものがあれば何でも構いませんよ」


 私はとりあえず身近で匂いに釣られた屋台に興味を示すと、ナナもお祭りの雰囲気に当てられたのか楽しそうに賛同してくれる。

 

「ヘンリエッタも同じものでいいかしら?」

 

「わ、私はマルグリット様とナナ殿の毒味…… いえ、食べきれなかったものを責任を持って処分いたします」


 毒味って私たちは王族じゃないんだから…… ん?ナナの分? 違う、ヘンリエッタの言い直した内容は食べきれなかったもの……。

 

 つまり『私たちの食いかけ』が目的か!

 

 くっ、短時間で慣れすぎでしょ貴方。磨きがかかった変態っぷりをどんどん隠さなくなってきたわね。

 

 開き直った変態ほど怖いものはないわ。何とかしないと……

 

 そう考えていた矢先、後ろから誰かにぶつかられてしまった。

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