12.すいか

「だれ」

誰何すれば亜弥は素直に現れた。半透明の薄い体に、西瓜をひと切れ差し出すと、果汁が垂れて撥水加工の床に跳ねた。

無言で微笑む彼女。悔いが込み上げる。

邪推からの絶望。手に手を取って夜の川へ沈んだ。でも私だけ、入水から生きて戻った。

ごめんね。一緒に逝けなくて。

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