ジジイと俺

「ああ! 深いところにいってはならんじゃろけ!」

川で遊んでいると

近所の注意大好きじいさんが言う

何かをしていると毎回、注意するんだ

山の中を駆け回っていると

「ああ! そんなんしたら遭難すっぞ!」

あぜ道を歩いていると

「なんじゃ、ぼーとして車きとってら、どうすんじゃ!」

畑のお手伝いをしていると

「しゃんとせえ、腰伸ばしな!」


イチイチいちいち口出ししてくるんだ

小さい頃から、ずうっとだ

ずうっと注意してくる


「なん、そげな格好して」

「当たり前や、中学生になったんじゃ」

「まだまだガキやなあ」

「もう、じじいの背え超してるわ」

「ホンマじゃ、こんまいのがこうなるんか」

「もう注意せんでええ」

「まだじゃ、まだまだ、嫁さもらって笑わせてから、また嫌がれや、考えたる」

「長生きするけえ?」

「そりゃもう、孫の顔見てから死んだるわ」


ジジイは久しぶりにケラケラと笑って、農作業に戻った

俺は嬉しくなってパリパリの制服を引っ張り深呼吸をしながら家路についた

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