ドロシーは少しだけポジティブになれた


「それじゃ、行ってくるよ。ドロシー、なるべく早く帰ってくるから、ちょっと待っててね」


「う、うん……」


「コレット、ドロシーのことよろしくな」


「任せて! エリックこそたんまり金を稼いできてね!」


 今日は金を稼ぐため、俺一人で帝国に武器を売りに行く。流石にドロシーを帝国に連れて行くわけにはいかないので、今日はコレットにお願いして二人で留守番してもらうことにした。まだドロシーを一人にするのは不安だったから、コレットの予定が空いていてほんと助かったな。


「おお、稼いでくるさ。じゃ、行ってきます」


 手を振ってそういうと、ドロシーは小さく手を振り返してくれた。それだけで、今日はいっぱい武器を売ろうってやる気が溢れてきた。よし、ドロシーがまた喜んでくれることをできるよう、一稼ぎしてきますか!


――――――――――


「あ、ドロシーさん。もうすぐお昼ご飯できるからちょっと待っててね」


「……は、はい」


 エリックが武器を売りに帝国に行ってから、ようやくお昼くらいになった。その間、コレットさんが私を心配してくれたのか色々と話しかけてくれたけど……全然、話すことができない。


 正直、私はまだ人が怖い。信じていた人に裏切られて奴隷にされられて、散々酷いことをされ続けて、かつて持っていた自信をことごとく踏み潰されたあの日々が、どうしても私の脳裏から離れてくれないから。


 それでも、エリックだけは信じたい。こんな、昔と違って何もかも汚されてしまった私のことを助けてくれて、婚約者として迎え入れてくれたこと……本当に、嬉しかったから。


 だって、今の私は昔の私じゃない。お金も地位も失って、身体もとことん汚されて。エリックに失望されて、あの時の約束を無視されたって当然の存在だから、まさか婚約者にしてもらえるなんて考えてもなかったから、すごく驚いちゃったけど……。


 ……でも、だからこそエリックに捨てられちゃうんじゃないかって不安があるの。何もできない私に失望して、裏切られる……そんなことになるのが、すごく怖い。


 もしかしたら、私を見捨てて帝国に行ったっきり戻ってこないかもしれない。信じたい、信じたいけど……人に裏切られ続けて、どうしてもエリックのことですら……疑ってしまう。


 こんな私が、エリックと一緒にいる資格なんてあるのかな……?


「ドロシーさん、出来たよ!」


「あ、ありがとう……ございます」


 コレットさんが美味しそうなサンドウィッチを作ってくれた。ニコニコ笑って、私が食べるのを待ってくれている。……本当に、素敵な人。きっと、エリックも本当はこういう人と一緒にいたいよね。


「どうしたの、ドロシーさん?」


「い、いや……そ、その……」


「何か悩み事? エリックに言えないことなら、私が相談に乗るよ?」


「……あ、あの……こ、コレットさんは……え、エリックのこと……ど、どう思っているのかなって思って」


 ……な、なんでこんなこと聞いちゃったんだろう。こんな質問、コレットさんを困らせるだけなのに。


「ん? あ、もしかして私がエリックに恋愛感情あるとか思っちゃった?」


「え、い、いや……え、エリックは……コレットさんみたいな人と一緒にいた方が、楽しいんじゃないかって思って……」


「ああ、なるほどね。最初に断言しておくけど、私は超筋肉質な人がタイプだからエリックは全然好みじゃないよ。だから恋愛感情もないから、安心して」


 そ、そうだったんだ……コレットさん、この前会ったお菓子屋のジャックさんみたいな人が好きなんだ……ちょっと意外。


「それとね、ドロシーさん。エリック、最近すごく楽しそうなんだよ。ドロシーさんがここに来るまでは、今よりも淡々としてたんだけどさ。今、すごく穏やかだし、ドロシーさんのことで頭がいっぱいみたい」


「……え?」


「だから、ドロシーさんはエリックの力になってるんだよ」


「私が……エリックの力に?」


「うん! エリックはきっと、ずっとドロシーさんと一緒にいたいって思ってるよ!」


 そうコレットさんから教えてもらって、私は少しだけポジティブになれた気がした。私が、エリックの力になれているって思うと……今の私も、何も出来ないわけじゃないんだって思えたから。


「……あ、あの……コレットさん」


「なになに〜?」


「よ、夜ご飯は……わ、私が作ってみてもいいですか? え、エリックに私が作ったご飯で……元気になってもらいなって思って……」


「いいじゃん、やろやろ! 絶対エリック喜ぶよ! 私も色々と手伝うね」


「あ、ありがとうございます……」


 でも、まだまだ私にできることは少ない。だから、もっともっとエリックの力になれるよう頑張りたい。料理は全然したことないから自信がないけど……エリックが頑張ってお金を稼いでいるから、美味しいご飯を食べさせてあげて、疲れを癒してあげたいな。


――――――――――

読んでいただきありがとうございます!


最近伸びが悪くてなかなかメンタルに来てるので、★×3やレビュー、フォローお願いします!お願いします!お願いします!(切実)

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