世界で一番可愛い婚約者
ドロシーを3億円で買った日から翌日。俺はドロシーの服を買うためにモンカ村に向かった。特にこれと言った特徴のない平凡な村ではあるが、知り合いが防具屋兼服屋を営んでいるので、そこを頼りにドロシーの服を買おうって算段だ。
さすがにずっと俺のお下がりを着せるわけにもいかないしな。ドロシーには、自分が気に入った服を着てほしい。
「いらっしゃーい……あれ、エリックだ。朝早くにうちに来るなんて珍しい」
店の扉を開けると、店主のコレットが出迎えてくれた。彼女は老人が多いモンカ村では珍しく若い女性で、天真爛漫な性格とルックスが合間って村中の人気者でもある。俺も親しくしている中で、たまにうちにご飯を作りに来たりしてくれる、気の置ける友人だ。
「ちょっと女性用の服を買いたくてな」
「え……ど、どういうこと? ま、まさかエリックそういう趣味が……」
「違う! まぁ、話せばちょっと長くなるんだけど、一言で伝えると婚約者ができた」
「…………えええええええええええええ!?」
目ん玉が飛び出しそうな勢いでコレットは驚いてしまう。そりゃ、いきなりこんなこと言われたらびっくりされるか。大げさすぎる気もするけど。
「だ、誰なの!? ど、どこで出会ったのその人!? わ、私が知ってる人!?」
「お、落ち着けコレット。実はな……」
さすがにドロシーの置かれている状況は伝えておいた方がいいと思い、コレットにドロシーの現状を伝えておいた。
「なるほど、それで幼馴染だった奴隷を買って婚約者にしたと。でも、もうドロシーさんは奴隷じゃないんでしょ? なら、私は普通に接しようと思うけどいいかな?」
「ああ、そうしてくれると助かるよ」
「いいってことよ! で、服が必要なんだね」
「ああ、だから何種類か服を用意してくれないか? ……すまないが、ツケで」
「あれ、エリックがツケなんて珍しいね」
「……お金がなくてな」
「またまた〜、武器でたんまり稼いで今三億くらい貯金あるんでしょ? そんな一気になくなるわけないじゃん」
「3億一気に使った」
「……え、もしかして婚約者さんに? 奴隷オークションで3億使ったの!?」
「それくらい払わないとドロシーを変な貴族に取られそうだったんだよ……」
「そうだったんだ……すごい覚悟決めたんだね。了解、大体の身長でいいから教えてくれる?」
「ありがとう、ほんとコレットには色々と助けてもらってばかりだな。確か身長は……これくらいかな」
「はいはい、オッケー。そしたら昼くらいに持っていくね。じゃ、また!」
それからコレットは店の裏側に入ってあれこれ準備をし始めた。邪魔になるのも悪いで俺は店を後にして、ドロシーが待つ自分の家に急いで帰った。
「ドロシー、もうすぐ服が来るから楽しみにしてな」
「……水着とか?」
「そういうエッチなのじゃないから……あ、来たか」
しばらく家で待っていると、コンコンとドアがノックされる音が聞こえてきた。どうやらコレットが服を持ってきてくれたようだ。
「お待たせーエリック」
扉を開けてコレットを出迎えると、何やら大きめなカバンを背負っていた。これを見るに、どうやらコレットはたくさん服を持ってきてくれたようだ。
「本当にありがとな、コレット。今度帝国のいい酒買ってくるよ」
「いいってことよ〜。それで、婚約者さんは……わぁぁぁ! す、すっごい美人だ!」
ドロシーの姿を一目見ると、コレットは目を輝かせながら彼女に近づく。それに対してドロシーはグイグイ来るコレットに少しびっくりしているのはオロオロとしてしまっている。
「その辺にしておけコレット」
「あ、ごめんごめん。ドロシーさんすごい美人だから、何を着ても似合うだろうなぁって思ってさ。それじゃあドロシーさん、この中から好きな服を選んでくださいな!」
大きなカバンを床に置いて、コレットは何枚か服を取り出した。おお、結構たくさん持ってくれたんだな。これならドロシーも満足に服を選べるんじゃないか。
「わ、私が選んでいいの……?」
「ああ、欲しいのはなんでも買ってやる」
「で、でもエリック、お金……」
「お金のことなら気にしなくていいから。俺は外で待ってるから色々試着しててくれ」
「うんうん、エリックはお金を稼ぐ能力は高いから心配しなくていいと思うよ! じゃあ、早速これとか着てみようよドロシーさん!」
俺が外に出ている間、どうやらコレットはドロシーに色々と服を着せたようで、「可愛い」やら「ちょー美人」やらが聞こえてくる。なんか、コレットの方が楽しんでるんじゃないか?
「エリック、ちょっと入ってきて」
「ん? ああ」
家の前でぼーっと待っていたら、コレットに呼び出された。何を買うか決めたのかな?
「ジャーン!」
「……ど、どう……?」
家の中に入ると、そこには可愛らしいドレスを着たドロシーの姿がいた。それはただ美しくて可愛いだけじゃなく、かつてガキの頃に見ていたドロシーを想起させる雰囲気があって、俺はちょっと心がジーンとなってしまう。
「す、すごくいい!」
「ほ、ほんと……エリック?」
「ああ、世界で一番可愛い!」
「そ、そんなことは……」
「ある! 俺は世界で一番可愛い婚約者を持てて幸せものだ!」
「も、もう……」
「おーいエリック、ドロシーさん燃えちゃう」
あまりに感動してしまったため、ドロシーのことを褒めまくっていたら顔がプスプスと音を立ててしまいそうなくらいドロシーの顔が赤くなっていた。一方の俺もコレットに注意されて冷静になると急に身体が熱くなってしまう。
「さてさて、あとドロシーさんが気に入った服はこれね。請求書はこれ。ま、払える時に払ってくれたらいいよ」
「何から何までありがとな、コレット」
「いいってことよ! 私、ドロシーさんとも仲良くなりたいし、これからもたまにエリックの家行くね。あ、来てほしくないときは連絡して!」
「あ、あのなぁ……。まぁ、今度三人でご飯でも食べるか」
「それいいね! じゃ、それ楽しみにしてるよ。じゃーねー!」
こんな感じでドロシーは無事、満足のいく服を手に入れることができた。
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