第13話

「さぁ、そろそろシャーリーのご両親のところに行きましょう」


エリザベスに連れられて両親の元に戻る。フレッド様は後から来るそうだ。そうよね、両親がいない所で先に会ってきたなんて言えないもの。


「お兄様、お待たせ致しました」


「エリザベス……遅いぞ」


クリストファー様が少しげんなりしたお顔をなさっているわ。両親はニコニコしてるけど、また何かやらかしたのかしら。もう! 勘弁してよ!!!


「お父様、お母様。どのようなお話をされていたのですか?」


「どのようなご家族ですかと聞かれたからな、普段の様子をお話ししていたんだよ」


「アイリーンの結婚をおめでとうと言ってくださったのよ! だからアイリーンの素晴らしさをお伝えしていたの」


ああ、なるほどね。クリストファー様がげんなりしていた理由はそれね。姉を一言褒めたら、両親は3時間は姉の自慢話をする。まさか、格上の公爵家の方にもすると思わなかったけど。


「クリストファー様、フレッド様がいらっしゃいました」


「よし、通してくれ。お待たせ致しました。フレッドをご紹介致しますね」


フレッド様が入って来られたわ。本当に素敵な方。また見惚れてしまいそうだわ。早くお話ししたいわ。


それなのに、ああそれなのにそれなのにっ!


フレッド様が部屋に入られた瞬間、お母様はとんでもない事を言い出した。


「まあ、熊のような方だこと! やっぱり田舎はダメね」


熊?! 熊ですって?! 熊のように逞しくて素敵な方とかなら分かるけど、思いっきり楽しんで馬鹿にしたわよね?! しかも、田舎はダメって言いました?! 紹介もされていないのに、この物言い、ありえないわ!


「グラール伯爵夫人は、私の友人を侮辱したいとみえる。グラール伯爵、どういうおつもりだい? 我が公爵家と辺境伯に敵対するということでいいのかな?」


クリストファー様が怒っていらっしゃる。そりゃそうよ! 馬鹿なの?! なんなの?! 貴族ならもうちょっと礼儀を学べー!!!


「も、申し訳ありません! 妻はずっと王都暮らしで、フレッド様のような野蛮……逞しい方を見た事がないので驚いてしまっただけなのです」


フォローしてるつもりだろうけど、お父様もフレッド様を侮辱したわよね! ありえない! ありえないわ!!! もういや! せめてまともな挨拶ぐらいしてよ!


フレッド様に嫌われたらどうしましょう。オロオロしながらフレッド様を見つめてていたら、両親を完全無視してわたくしに跪かれた。急にどうされたの?!


「はじめまして。フレッド・エル・ドゥイエと申します。お会いできて光栄です。シャーリー・デル・グラール様、どうか私と結婚してください」


え?! いきなりプロポーズ?!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る